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生物生産が高まった富栄養湖沼においてなぜ栄養塩の高濃度が維持され続けるのかという疑問に回答を得るため、日本を代表する富栄養湖沼千葉県手賀沼においてリン循環の調査を実施した。湖底堆積物間隙水の観測から評価した堆積物から溶出するリンは河川から流入するリンの3分の2を湖水に無機態のリンを供給している。湖水をろ過して得られたフィルター試料のリンと堆積物粒子のリンの比較を行ったところ、堆積物では有機態のリンの割合がフィルター試料に比べて大きく減少していた。すなわち、堆積物から溶出してくるリンの多くは湖内で生産された有機物の堆積物中での分解によるものと考えられる。湖水中での有機態リンの再生速度の結果を加えることで見積もられた湖水中での無機態リンの平均滞留時間は1.5日と計算された。この速い無機態リンの消費とその後の湖水中及び堆積物中での再生が湖水中での高いリン濃度を維持している要因かもしれない。