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惑星大規模分化の有無を問わず、惑星規模で揮発性元素の欠乏が指摘されている。この揮発性元素の欠乏については、蒸発–凝縮過程において揮発性元素が、取り去られたことに起因する不完全凝縮説が提案されている。一方、原始太陽系星雲を形成する以前から、星間分子雲中で元素分別が既に起きていたという主張もある。本研究では、アルカリ元素に富む惑星物質を対象として年代学研究を実施し、原始太陽系星雲における元素分別過程に制約を与えることを目的としている。Y-74442に含まれるアルカリ岩片の形成年代は~4.4Gaであり、Sr,Ca初生同位体組成とその進化を考慮すると、これらの岩片の前駆物質は、4.4Ga以前にアルカリ元素に富む元素分別を経験していたことが示唆された。より高時間分解能で元素分別過程を議論するために135Cs-135Ba年代測定を試みている。予察的なBa同位体分析を実施し、135Csの放射壊変の寄与をどの程度正確に見積もることができるか検討した結果、議論に十分な分析精度が得られていると判断できた。