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惑星表層での衝突現象や熱水噴出口のような前生物的な条件を模した衝撃圧縮実験あるいは高温高圧実験によって、アミノ酸からペプチドが生成することが報告されている。これらの実験により、重合反応には圧力と温度の両方が寄与することが明らかになったが、圧力と温度がそれぞれどのような役割を果たしているのかはよく判っていない。我々はこれまでに、重合反応における圧力の重要性を確かめるため、アラニンに対して室温での加圧実験を試みており、アラニンの2量体、3量体が生成することを見出している(Fujimoto et al., 2015)。しかし、疎水性や酸性、塩基性といったアミノ酸側鎖の性質による圧力誘起重合反応への影響はいまだ判明していない。また、性質の異なるアミノ酸同士の反応性も未知数である。そこで、まずはアミノ酸側鎖による圧力誘起重合反応への影響を確認するため、隕石中にも含まれるグリシンやβアラニン、グルタミン酸などに対する室温での加圧実験を試みた。