p. 122-
水銀は地圏では活動的な元素であり、マグマ活動と関連する熱水活動に伴って移動する。しかし、西南日本ではマグマ活動が顕在しない地域で水銀が10mよりも浅い井戸水に観察されることがある。霧島連山硫黄山で得られたマグマ水中の水銀の挙動と比較して、大阪平野の地下水中水銀の起源について考察した。マグマ水中ではヒ素がイオウと親和的に挙動するのに対して、水銀は気体になりやすい傾向が明らかであった。大阪平野では水銀検出井戸は大部分が活断層に平野周辺の活断層に沿った3ヶ所に集中して出現する。20〜30kmの深度の深部低周波地震の発生地点と水銀検出井戸出現地域が一致することと水銀同位体比から、水銀は地殻下部の脱水現象と関係していることが推定される。