日本地球化学会年会要旨集
2019年度日本地球化学会第66回年会講演要旨集
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口頭発表(第一日目)
G01 大気微量成分の地球化学
  • 奥田 祐樹, 安蒜 啓介, 桑原 真明, 橋本 伸哉
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G01 大気微量成分の地球化学
    p. 1-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
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    海洋から放出される非メタン炭化水素の中でも反応性の高いイソプレンは、光酸化して二次エアロゾルを形成し雲の生成に関与する等、大気化学において重要な役割を果たしている。海洋では植物プランクトンである藍藻や珪藻等がイソプレンを生成することが報告されている。本研究では、国立環境研究所から入手した藍藻Synechococcus sp.ならびに藍藻Calothrix sp.を対象に、光量子束密度を変化させて培養を行い、イソプレン生成にどのような影響を及ぼすか検討した。本実験の結果から、Synechococcus sp.とCalothrix sp.では、イソプレン濃度が最大となる光量子束密度に違いがみられた。培養実験の結果から、雲量の変化などによる光量子束密度の変動が、海洋でのイソプレン生成に影響を及ぼす可能性が示唆された。

  • 酒井 晃, 佐藤 七恵, 濱本 和馬, 奥田 祐樹, 橋本 伸哉
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G01 大気微量成分の地球化学
    p. 2-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
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    揮発性有機化合物に含まれるハロカーボンはオゾンの分解などに影響を与えている。ハロカーボンの生成源として海洋微生物などが知られている。しかし、既知の生成源では地球規模の生成量を説明するには不十分となっているため未知の生成源が存在すると考えられている。そこで本研究では、海洋に広く分布しているが、ハロカーボンの生成について知見がまだないラビリンチュラ類に注目した。実験ではヤブレツボカビ科に含まれる4種のラビリンチュラ類について25℃での培養実験を行い、うち1種については20℃及び30℃でも同様の実験を行った。実験の結果、3種のラビリンチュラ類からモノハロメタンの生成がみられた。また、培養温度の変化実験ではCH3Clの生成速度について温度依存性が認められた。本研究からラビリンチュラ類が海洋中でのモノハロメタンの新たな生成源となりうることと、海水温度がラビリンチュラ類のハロカーボン生成に影響を及ぼすことが示唆された。

  • 小磯 昂士, 市川 賢一, 福田 文哉, 奥田 祐樹, 橋本 伸哉
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G01 大気微量成分の地球化学
    p. 3-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
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    成層圏のオゾンの分解に影響を及ぼすブロモホルムの生成源として、海洋植物プランクトンなどが知られているが、ブロモホルムの海洋での分解に関してはまだ知見が少ない。本実験では、海洋バクテリアに着目し、そのブロモホルムの分解能力を評価した。ブロモホルムの最終濃度を300pmol/Lになるように調整したMarin broth 2216培地を用いて海洋バクテリアを培養し、ブロモホルム濃度の経日変化からその分解速度を算出した。実験した10株中8株においてブロモホルムの分解が見られ、その半減期は短いもので0.4日(Phaeobacter gallaeciensis)であった。実際の海洋におけるブロモホルムの半減期は数日から数週間であり、海洋バクテリアがブロモホルムの消失に関与している可能性が示唆された。

  • 斉藤 拓也
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G01 大気微量成分の地球化学
    p. 4-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
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    フロンに起因するオゾン層破壊への警告から40年以上が経ち、「サイエンスとしてやることがまだ残っているのですか?」と聞かれることがある。実際、世界中の多くの研究者たちの見解をまとめたオゾン層破壊の科学アセスメントの最新版(WMO, 2018)によると、「オゾン破壊物質の規制が奏功し、大気中のオゾン破壊物質の量が減少してきたことで成層圏オゾンの回復は既に始まっており、今世紀半ばには回復するだろう」と予想されている。ただ、研究のピークはだいぶ前に過ぎているものの、残された課題と新たに出てきた課題があり興味が尽きない。本講演では、オゾン破壊物質に関する最近の研究を簡単にレビューすると共に、発表者が取り組んでいる熱帯樹木の生物活動や熱帯泥炭林の火災によるオゾン破壊物質の放出について紹介する。

  • 渡辺 幸一, 楊 柳, 金 美佳, 長堀 友, 尾形 佳行, 源本 楓, 津田 貴之
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G01 大気微量成分の地球化学
    p. 5-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
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    国内由来の大気汚染だけでなく、アジア大陸由来の越境汚染の影響も大きく受ける富山県内において大気中のH2O2濃度をHCHO、O3やSO2と共に測定し、大気中の濃度変化やSO2の液相酸化への影響について考察した。過酸化物の採取は、ミストチャンバー法を用いて行い、採取した試料中の過酸化物濃度を、HPLC・ポストカラム・酵素式蛍光法で測定した。H2O2は夏季(7, 8月)に極大となる明瞭な季節変化が観測された。HCHO濃度も同様に7, 8月に極大となり、H2O2やHCHOは光化学反応による二次生成の寄与が大きいものと考えられる。特に、越境汚染の影響を大きく受けていた2013年夏季にH2O2濃度が非常に高かった。一方でO3濃度の極大は5月に観測され、H2O2やHCHOとの濃度ピークに2か月程度のズレがみられ、北陸地方の特徴と考えられる。H2O2は、夏季(7、8月)にはO3と優位な正の相関関係が、寒候期(11~3月)にはNOXと負の相関関係がみられた。

  • 宮本 千尋, 松木 篤, 板井 啓明, 高橋 嘉夫
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G01 大気微量成分の地球化学
    p. 6-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
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    本研究では、能登半島において粒径別に採取したエアロゾル試料中のニッケル(Ni)、バナジウム(V)、亜鉛(Zn)および鉛(Pb)に着目し、大気中濃度とその粒径分布、化学種の解析から、主に化石燃料などの燃焼過程で人為的に発生する微量金属元素の起源と大気中での挙動、その季節変化について詳細に理解することを目指した。 Zn・PbとNi・Vでは大気中質量濃度の粒径分布と化学種の傾向に違いがみられ、これらはそれぞれの元素の揮発性の違いから引き起こされる粒子形成過程の違いを示唆していると考えられる。 また、試料中の金属元素の地殻に対する濃縮係数、元素相関比、空気塊の輸送経路の違いから、夏の試料では、主に船舶由来と推定される重油燃焼起源物質の寄与が大きく、冬の試料では石炭など他の燃料燃焼を起源とする物質の寄与大きかったことが示唆された。

  • 寺西 毅洋, 栗栖 美菜子, 宮本 千尋, 板井 啓明, 高橋 嘉夫
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G01 大気微量成分の地球化学
    p. 7-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
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    大気中に浮遊している微粒子を総称してエアロゾルといい、とくに人為起源物質が環境問題を引き起こしている。なかでもカドミウム(Cd)は揮発性が高く、大気中に放出されやすいと考えられる。しかし、その発生過程や大気中での挙動については理解が進んでいない。そこで本研究ではエアロゾル中のCdについて安定同位体比や化学種の分析から放出過程や大気中での挙動の解明を目的とした。分析の結果、揮発性が高いCdは燃焼の過程でその多くが一度気化し、大気中で水溶性化合物を形成することが分かった。一方で、燃焼過程で気化せずに残留した一部のCdは酸化物スラグに含有され、難溶性化合物に類似した局所構造を持った粒子として飛来すると考えられる。また、揮発性の高いCdの場合、燃焼過程の際に揮発を経験した水溶性化合物のCd同位体は原料物質と大きくは変わらないが、少量残留した難溶性化合物中のCdは、大きな同位体分別を示すことが示唆された。

  • 安藤 卓人, 飯塚 芳徳, 大野 浩
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G01 大気微量成分の地球化学
    p. 8-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
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    南東グリーンランドSE-Domeのアイスコア試料中に含まれるエアロゾル(水溶性塩微粒子)の化学形態や混合状態に着目してラマン分光分析を行なうことで,南東グリーンランドにおけるエアロゾル輸送過程と将来予測を行なった。スペクトルから単一粒子の一部が混合物であることがわかった。特にCaSO4とNaNO3の混合物が多くみつかり,1993年以降に割合が増加していたことがわかった。CaSO4は単体だと雲核形成能が極めて低いが,混合物形成によって雲核形成能が増加する。また,2000年以降のこの地域におけるCaSO4の起源は,グリーンランド沿岸の露岩域であると推定される。このまま氷床の縮小が進行した場合,沿岸域でCaSO4+NaNO3混合物が形成されやすくなり,雲形成がより促進されると考えられる。

  • 伊藤 彰記
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G01 大気微量成分の地球化学
    p. 9-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
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    大気中へと放出された鉱物エアロゾルは放射・雲特性に影響を及ぼし、気候へと影響を与えることが考えられる。全球モデルを用いて、鉱物エアロゾルによる放射効果を解析した。

  • Gochoobazar Oyunjargal, Koshi Yamamoto, Oidov Munkhtsesteg
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G01 大気微量成分の地球化学
    p. 10-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
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    Atmospheric pollution has become a serious environmental issue in Ulaanbaatar. Suspended Particulate Matter samples were collected from 2014-2018. The purpose of this study is to determine the chemical compositions and the possible sources of SPM. The concentrations of water-soluble ions and trace metal elements were measured by Ion chromatography and ICP-MS.

  • 鈴木 雄太, 山本 鋼志, 三村 耕一
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G01 大気微量成分の地球化学
    p. 11-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
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    UNICEFによると,ウランバートル(UB)の冬期大気汚染レベルは世界最悪といわれており,WHOの定める一日当たりの環境基準値の133倍にも及ぶPM2.5が観測された.我々の研究グループは,UBの大気粉塵量が多い冬期に有機化合物を多く含むことを示唆した.そこで本研究では,UBの大気粉塵中の有機化合物を指標としてその起源を探るとともに,発がん性物質である多環式芳香族炭化水素(PAHs)の同定・定量を行った.脂肪族炭化水素からは,陸上の高等植物の特徴がみられたが,高等植物のCPI値と比べると偶数炭素数の炭化水素の存在度が高く,化石燃料の燃焼の影響を受けていると考えられる.芳香族炭化水素に関しては,発がん性が認められているPAHsが冬期のサンプルから50 ppm程度検出された.また,Yunker et al.(2002)によって提唱されたDiagnostic ratioを用いた起源推定では,UBの大気粉塵は車両起源の粒子は少なく,石炭燃焼起源のものが多いと考えられる.

  • 河村 公隆, B. Kunwar, D. K. Deshmukh, Petr Vodicka
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G01 大気微量成分の地球化学
    p. 12-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
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    薪ストーブで採取した煤の化学分析を行った。煙突内沈着物中にカリウム、レボグルコサン等を検出した。煤中のKは煙突下部で急激な濃度減少を見せたのに対して、レボグルコサンは高度と共に濃度増加を示した。これは、Kの沸点が高い(774°C)のに対して、レボグルコサンのそれは低い(384°C)ことで説明できる。Kとレボグルコサンは逆相関を示した(r=0.55)。煙突内を煙が上昇する間にKが選択的に煙から除去されることが示され、nss-Kのバイオマス燃焼トレーサーとしての使用は限定的なものであることが解った。

S01 海洋-大気境界層における地球化学(SOLAS)
  • 宮﨑 雄三
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: S01 海洋-大気境界層における地球化学(SOLAS)
    p. 13-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
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    海洋表層に由来する大気エアロゾルは雲凝結核や氷晶核として大気の放射収支や雲・降水過程に影響を与えるほか、大気-海洋間における生元素の循環にも影響を及ぼす。これまで海洋表層の微生物活動が活発な海域(亜寒帯西部北太平洋、亜熱帯東部太平洋)において、国内外の研究船による海洋大気観測を重点的に実施し、エアロゾルと表層海水中の微生物活動指標との系統的な比較など、海洋大気エアロゾルの主要成分である有機物の起源や変質過程に関わる研究を行ってきた。本講演では、上記の海域において明らかになってきた、海洋表層と大気のインターフェースにおける有機物を介した生物地球化学的なリンケージに関する研究を紹介する。

  • 栗栖 美菜子, 坂田 昂平, 植松 光夫, 高橋 嘉夫
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: S01 海洋-大気境界層における地球化学(SOLAS)
    p. 14-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
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    エアロゾル中の燃焼起源鉄が自然起源鉄に対して4‰程度低い鉄安定同位体比を持つことを用いて、同位体と溶解率をもとに海洋エアロゾル・表層海水における起源別エアロゾルの寄与を推定した。外洋域のエアロゾル試料は鉄濃度が低く、粒径によらず地殻に近い同位体比を示した。一方、沿岸域の試料は鉄濃度が高く、微小粒子が粗大粒子に対して0.5-2‰程度低い同位体比を示し、燃焼起源鉄の寄与が示唆された。水への溶解率は微小粒子が粗大粒子に対して大きく、微小粒子の中でも同位体比が低いほど溶解率が高い傾向が見られ、高い溶解率を持つ燃焼起源鉄の存在が海洋エアロゾル中の溶解率を決める一因であると示された。混合式から、エアロゾル中の溶解性鉄のうち燃焼起源鉄が占める割合は、アジア大陸由来の空気塊を得たエアロゾル試料では特に大きく、最大80%程度あることが分かった。エアロゾルと海水の鉄濃度、同位体比の比較結果についても議論する。

  • 谷水 雅治
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: S01 海洋-大気境界層における地球化学(SOLAS)
    p. 15-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
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    本講演では無機分析化学の観点から、硫黄化学種の高感度定量に関する分析手法を比較し、将来的に大気化学分野で必要とされる分析法や分析感度について考えることで、大気中でどのような硫黄化学種の変化が定量的に起こっているのか、同位体分析を含めた物質収支の研究に生かしたい。大気中での重要な硫黄化学種の変化は、海洋中の微生物が放出するジメチルスルフィド(DMS)から硫酸塩エアロゾルに至る酸化経路での、DMSO、DMSO2、MSAの形成であり、ガスクロマトグラフィーやイオンクロマトグラフィーにより定量されている。これらの地球化学分野で用いる分析法に対して、工業分野でもDMSOやMSAの定量は重要であり、半導体や製薬の分野では他の定量手法がとられている。現在我々は、クロマトグラフィーとICPMSを結合することによる降水中硫黄化学種の高感度定量法の確立に着手しており、これらの現状を報告する。

  • 津田 敦, 大木 淳之
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: S01 海洋-大気境界層における地球化学(SOLAS)
    p. 16-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
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    世界の海洋には、夏期においても鉄が不足し(0.2nM以下)、植物プランクトンによる基礎生産が制限され、硝酸などの栄養塩が余っている海域が3海域ある(南極海、赤道湧昇域、亜寒帯太平洋)。微量元素である鉄濃度を調節し、余っている栄養塩を使って、基礎生産を促し、大気中の二酸化炭素を海洋に吸収させる実験が海洋鉄散布実験である。本発表では我が国主導した3つの実験(SEEDS, SERIES, SEEDS II)の概要を紹介するとともに、一連の鉄散布実験以降、国際社会が、鉄散布を含む地球工学的手法がどのように認識され、法的規制へと至ったかを紹介する。

  • 角皆 潤, 三好 友子, 松下 俊之, 伊藤 昌稚, 小松 大祐, 鋤柄 千穂, 中川 書子
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: S01 海洋-大気境界層における地球化学(SOLAS)
    p. 17-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
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    大気中のメタンは代表的な温室効果気体であるが、その発生源・供給源や挙動には未解明の点も多い。本研究では、琵琶湖水中に過飽和となっているメタンの起源を特定し、さらに酸化分解を中心とした水柱内でのメタンの挙動を把握することを目的に、2013年以降水柱中の溶存メタンの安定同位体比(炭素および水素安定同位体比)を継続的に観測した。水柱の溶存メタンの炭素および水素安定同位体比から、水柱で進行した酸化分解を補正し、その起源のみを反映していると考えられる新指標の値を算出し、水柱の溶存メタンの主要供給源となっている可能性のある複数のメタンと、その値を比較した。その結果、琵琶湖表層で過飽和となっているメタンは琵琶湖の沿岸域 (littoral zone) からの流入によって供給されている可能性が高いと結論した。これは炭素安定同位体比のみを指標に用いて得られた先行研究の知見とも一致した。

  • 東 麗緒菜, 芳村 毅, 津旨 大輔, 坪野 考樹, 三角 和弘, 服巻 辰則
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: S01 海洋-大気境界層における地球化学(SOLAS)
    p. 18-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
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    沿岸海域における二酸化炭素分圧(pCO2)の変動メカニズムは未解明の部分が多く,また短期的に大きく変動することから連続観測の必要性が高まっている.しかし電力供給の困難な環境における観測方法は確立されておらず,データは不足しているのが現状である.本研究ではpCO2連続観測システムを構築し,汽水湖におけるpCO2の連続観測,およびその変動要因の解明を行った.調査の結果,最長24日間の連続観測に成功し,いずれも海水pCO2は大気に対して未飽和の状態であった.塩分の係留データから淡水と海水が単純混合した場合のpCO2を算出したところ実測値が計算値よりも低い値を示したことから,沼内では生物生産などによる炭素の固定があり,それが海水pCO2未飽和の要因となっていると考えられる.

  • 南川 佳太, 伊藤 駿, 孟 繁興, 宮下 直也, 大木 淳之
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: S01 海洋-大気境界層における地球化学(SOLAS)
    p. 19-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
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    海洋や大気には揮発性有機ヨウ素化合物 (VOI) が存在し、その生成には生物の寄与が報告されている。北海道噴火湾の底層水においては、春季ブルーム後の4月から7月にかけてヨードエタンとヨードメタンの2種類のVOIの高濃度が観察されるという報告もある。本研究では、沿岸堆積物が海水中VOIの発生源であると推測し、噴火湾湾奥部における隔月ごと (2018年3月初旬から2019年6月) の海水および堆積物間隙水試料中VOIの定量結果から、その関係性を明らかにすることを目的とした。堆積物試料表層の間隙水中では、直上水中よりも高濃度のVOI が確認された。2018年の堆積物中VOI濃度の傾向は、 (1) 3月初旬で最も低く、(2) 3月中旬から8月まで高濃度を維持、(3) 10月から12月まで濃度減少、の3つのフェーズに分けられた。直上水では2週間から2ヶ月遅れで類似する傾向が見られた。2019年については、VOI濃度変化の傾向が前年と異なった。

G05 海洋における微量元素・同位体
  • 小畑 元, 金 泰辰, 岡 顕, 西岡 純, 山下 洋平, 小川 浩史
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G05 海洋における微量元素・同位体
    p. 20-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
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    海水中の鉄や亜鉛などの微量金属元素は、植物プランクトンにとって必須の微量栄養塩である。そこで、本研究では白鳳丸KH-12-3次研究航海の西部北太平洋南北測線において亜鉛濃度の鉛直断面分布を明らかにするとともに、その特徴的な分布から数値モデリングを用いて海洋における亜鉛の循環メカニズムを明らかにした。 本研究により、北緯10度から47度までの溶存態亜鉛の鉛直断面分布が明らかになった。海水中の亜鉛はケイ酸とよく似た鉛直分布を示すが、北太平洋亜寒帯ではやや異なる傾向を示すことが知られている。本研究ではこのケイ酸との挙動の違いを「Zn*」で表した。Zn*の分布は北太平洋中層水の分布と似ている。数値モデルを用いてこの分布の再現実験を行い、海水中のZnの分布を支配する要因について検討を行った。

  • 黄 国宏, 小畑 元, 金 泰辰, 近藤 能子, 西岡 純
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G05 海洋における微量元素・同位体
    p. 21-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
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    海水中の銅は植物プランクトンにとって必須の栄養塩であるとともに高濃度では毒性を示すことが知られている。銅は有機錯体を形成することによりその生物利用性を変化させるため、海水中の銅の形態の解明は重要な課題である。本研究は、北太平洋亜寒帯における海水中の溶存態銅のサイズ別分布およびその有機錯体の分布を明らかにした。溶存態銅の濃度は1.28 nMから4.82 nMであり、真の溶存態銅の濃度は0.47 nMから2.75 nMであることがわかった。真の溶存態銅は溶存態銅の30% - 100%を占める。表面水における真の溶存態の割合は低く、深度とともに上がり、やがて中層に最大値になった。二種類の有機錯体を検出された。強い有機配位子(L1)の濃度は1.02 nMから2.95 nMとなりで、弱い配位子(L2)の濃度は0.77 nMから8.78 nMとなった。表層水では、L1は溶存態銅と同じような分布を示した。

  • 野口 忠輝, 張 勁, Wenkai Guan, Bingzhang Chen, Meixun Zhao, Yuanli Zhu, 石坂 丞 ...
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G05 海洋における微量元素・同位体
    p. 22-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
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    季節風や偏西風によって運ばれる大陸由来の黄砂や人為起源の煤塵からなるエアロゾルは海洋表層基礎生産にとって非常に大きな役割を持っていることが示唆されている。そこで本研究では、学術研究船「白鳳丸」(JAMSTEC所属) KH-17-5(2017/11/14―12/18)に参加し、大気由来微量元素と表層基礎生産の関係に着目した、大気海洋間の物質輸送についての評価を目的として研究を行った。エアロゾルから主要化学成分や栄養塩、REEsを分析し、表層海水からはChl-a濃度、バイオマーカーを測定した。REEsからエアロゾルが黄砂、石炭煤塵、海塩の混合物であることが明らかとなり、それらの混合比はそれぞれ60%、26%、14%と計算され、また実際の沈降量を定量化することができた。全無機窒素沈降量とクロロフィルa濃度の間に正の相関(R=0.89)が見られ、大気由来の窒素沈降がこの海洋基礎生産を向上させる役割を果たしていることが支持される結果となった。

  • 伊左治 雄太, 小川 奈々子, 高野 淑識, 吉川 知里, 小畑 元, 本多 牧生, 大河内 直彦
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G05 海洋における微量元素・同位体
    p. 23-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
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    二価鉄を中心に配位したテトラピロール化合物であるヘムは、生物にとって不可欠な酸化還元反応や電子伝達反応を駆動するヘムタンパク質の活性中心である。鉄は海域によっては一次生産を規定する重要な元素であるが、海水中のヘム濃度の報告は数例しかない。本研究では、生体中の主要なヘムであるヘムbの定量法および炭素・窒素安定同位体比分析法を開発し、様々な生体試料・環境試料に応用した。東京湾沿岸とインド洋外洋の懸濁対有機物中のヘムb濃度は大きく異なっていたが、これは主に東京湾の懸濁態有機物濃度の高さに起因すると考えられる。また、インド洋では北緯16度から南緯15度にかけてヘムb濃度が低下する傾向が見られた。発表では、インド洋のヘムb濃度プロファイルの規定要因や、ヘムの分布・動態を明らかにすることが海洋鉄循環の理解にどう貢献できるかについて議論する。

  • 池上 隆仁, 木元 克典, 岡崎 裕典, 佐藤 都, 本多 牧生, 高橋 孝三, 原田 尚美, 藤木 徹一
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G05 海洋における微量元素・同位体
    p. 24-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
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    西部北太平洋は、珪質殻プランクトンの生産量が高く、世界の海洋の中でも生物ポンプによる二酸化炭素吸収量の大きな海域である。西部北太平洋では表層混合層から輸出された粒状有機炭素が他の海域に比べて分解されにくく、深海まで効率的に輸送される。その要因の一つが珪質殻プランクトンによるバラスト効果であると考えられているが、それ以外の要因についてはほとんど分かっていなかった。演者らは、>1 mmの大型海洋沈降粒子による輸送が生物ポンプの効率を高めている要因の一つではないかと考え、これまで慣例的に沈降粒子から除外されてきた>1 mm分画の試料についてその構成要素と有機炭素量の内訳を調査した。その結果、>1 mm海洋沈降粒子が、西部北太平洋の海洋深層への有機炭素輸送に貢献しており、その主要な運び手の一つがフェオダリアであることを明らかにした。

  • 南 秀樹, 福原 かりん, 野坂 裕一, 丸尾 雅啓, 小畑 元
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G05 海洋における微量元素・同位体
    p. 25-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
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    北部北太平洋北緯47度に測線を設け,2012年8月から10月に行われた学術研究船白鳳丸KH-12-4次航海と,2017年6月から7月のKH-17-3次航海において表層堆積物をマルチプルコアラーで横断的に採取した。この堆積物中の親生物元素および生物活性微量金属元素を分析し,その水平分布や挙動について考察した。有機態炭素および生物起源ケイ素(Biogenic-Si)の分布から,生物生産は160°Eから170°Wへ向けて減少する傾向をみせた。また,BD-9(170°E,6310m)において金属元素が高含有量を示し,比較的酸化的な状態にあることがわかった。これよりも東部の情報については発表時に報告する予定である。

  • 藤森 佳奈, 西野 博隆, 赤木 右
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G05 海洋における微量元素・同位体
    p. 26-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
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    海水の炭酸塩成分は希土類元素他様々な元素を吸着し、海水柱の元素の移動に大きな役割を担っている可能性がある。本研究では、自然の海水柱を模して、炭酸塩粒子を与えて吸着実験を行った。その結果、分配に強く影響する因子を明らかにしたことを報告する。pH とカルシウム濃度から系の熱力学的な計算を行うと、希土類元素により、炭酸カルシウムの溶解が著しく阻害されることが分かった。 一方で、希土類元素の吸着層自身は二酸化炭素の分配によってリセットされていることから、希土類元素は速やかに交換していることが分かり、得られた希土類元素の分配のパターンの形状は有効と考えられる。しかし、絶対値には炭酸カルシウムの溶解の阻害により小さな値が得られている可能性がある。 分配パターンの形状は、鉄の吸着層によって影響を受けるが、海水中のMnはほとんど影響しないこと、海水のpHによっても、敏感に変化することが分かった。

  • 鈴木 勝彦, 黒田 潤一郎, M.L.G. Tejada, 後藤 孝介, 藤崎 渉
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G05 海洋における微量元素・同位体
    p. 27-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
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    海水のオスミウム(Os)同位体比は,過去の地質イベントを鋭敏に反映する。海水のOs同位体比は,Os同位体比の高い大陸地殻(187Os/188Os = 1.0-1.4),同位体比の低いマントルと地球外物質(それぞれ,187Os/188Os = 0.11-0.13,0.127)の3つの構成要素からのフラックスのバランスで決まる。すなわち,温暖化が進むなどで,風化による大陸からのフラックスが増えれば,海水のOs同位体比は高くなり,大規模な火成活動があれば同位体比が低くなる。隕石が衝突すれば,海水のOs同位体比は一気に下がる。海水のOs同位体比の変動は堆積岩に記録をされており,堆積岩の微量Osの同位体比を分析することで,過去のOs同位体比変動を復元できる。Osは海水中の滞留時間が数万年であり,高い解像度での変動の解析が可能ある。発表では実際に得られたデータを示しながら,地質的なイベントとの関連を紹介する。

  • 藤原 由大, 辻阪 誠, 高野 祥太朗, 宗林 由樹
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G05 海洋における微量元素・同位体
    p. 28-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
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    W同位体比は様々な地球化学過程によって変動することが確認されているため,濃度とともに同位体比を分析すれば,海洋と大陸,堆積物,および海底熱水系の間のフラックスや人為起源汚染の影響をより精密に評価できると考えられる.MC-ICP-MSによる測定のためには,Wを海水から2500倍以上濃縮しなければならない.この濃縮分離操作時の同位体分別を防ぐため,Wを定量的に捕集する必要がある.さらには,操作中の汚染を防ぎ海洋中の主要元素とWを分離することが必要である.キレート樹脂TSK-8HQカラムを用いるWの高倍率濃縮を検討した.未添加海水試料の濃度は51.5 ± 3.3 pmol/kg (n = 4)であり,海水を用いた添加回収実験の回収率は101 ± 16 % (n = 3)であった.先行測定では,未添加海水試料のW同位体比δ186/184Wは0.40 ± 0.05 ‰ (n = 3)であった.

  • 深澤 徹, 浅沼 大地, 小畑 元, 臼井 聡, 松岡 史郎, 則末 和宏
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G05 海洋における微量元素・同位体
    p. 29-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
    会議録・要旨集 フリー

    深海底のFe-Mn酸化物には地殻平均の約55,000倍のTeが濃縮している。Teは有用なレアメタルであり,この高濃縮メカニズムとそれが進行する海域を解明することは海洋化学の学術面や海洋資源戦略の面で重要である。これまでTe高濃縮機構の解明のためにFe-Mn酸化物等の固相を中心とした分析・解析に基づく研究が行われてきた。一方で高濃縮機構に深く関わる海水中Teの酸化還元化学種Te(IV),Te(VI)の知見は極めて乏しい。また海水中Te分析法の一つであるMg(OH)2共沈-水素化物発生原子吸光法は,使用する試薬がアンモニアのみであり,ブランク値を低く抑えやすく,Te化学種を定量的に濃縮することが可能である一方,多数の試料分析に基づく海洋研究に適さないと考えられる。そこで本研究では主にMg(OH)2共沈によるTe化学種の濃縮,及びイオン交換樹脂カラムによるTeの分離に関する基礎検討を行った。

  • 土屋 真緒, 高野 祥太朗, 辻阪 誠, 今井 昭二, 山本 祐平, 宗林 由樹
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G05 海洋における微量元素・同位体
    p. 30-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
    会議録・要旨集 フリー

    海水中のNi, Cu, Znの安定同位体比は海洋の生物地球化学サイクルを解明するための重要な手がかりとなる.海洋でのNi, Cu, Zn同位体比はいずれも表層付近での変動が大きい.外洋表層では,溶存態Ni, Cu, Znは大陸からの塵や海流により供給され,生物によって除去される.本研究では,降水および陸水試料中Ni, Cu, Zn同位体比分析法の開発を行った.これらの試料はNi, Cu, Zn同位体比測定に干渉する元素を多く含むため,前処理によってNi, Cu, Znを濃縮するとともに,干渉元素を除去する必要がある.本法では,NOBIAS CHELATE-PA-1 キレート固相抽出とAG-MP1陰イオン交換により,試料中Ni, Cu, Znを分離濃縮した後マルチコレクタ型ICP-MSに導入して同位体比を測定した.また,河川水試料の繰り返し分析により,本分析法の精度を評価した.発表では,分析法の詳細および降水・陸水試料中のNi, Cu, Zn同位体比について報告する.

  • 浅沼 大地, 松原 由奈, 丸山 魁, 深澤 徹, 則末 和宏, 小畑 元
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G05 海洋における微量元素・同位体
    p. 31-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
    会議録・要旨集 フリー

    地球環境におけるPb安定同位体の存在比は一定ではなく、鉱物の形成年代やその種類に応じて異なる。この特性からPb安定同位体比は地球化学分野では有用なトレーサーとして用いられてきた。海洋へは、自然のサイクルでの供給に加えて人類活動によりPbが供給されており、その同位体比はPbの循環を理解する上で重要である。海水中のPbは溶存態と粒子態の2態として存在しており、これらの同位体組成を調べることは、溶存-粒子の相互変換過程解明において有用である。本発表では懸濁粒子態Pb安定同位体比の高精度分析法の開発に向けた基礎検討の結果について報告する。

  • 小松 大祐, 須原 大将, 有賀 詩織, 成田 尚史
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G05 海洋における微量元素・同位体
    p. 32-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
    会議録・要旨集 フリー

    生物に必要不可欠な窒素源の1つである水圏環境中のアンモニウム態窒素は、大気からの沈着や土壌中の微生物によって供給される他、下水や肥料などの人間活動によっても供給されており、その起源や挙動を把握することは重要である.安定同位体比は起源推定や動態解析に有用であるため、本研究では既報の次亜塩素酸ナトリウムを用いてアンモニウムから亜硝酸へ定量的に酸化する方法と亜硝酸から一酸化二窒素に変換する方法とを組み合わせ、アンモニウムから亜硝酸を経由し一酸化二窒素に変換することによって簡便かつ高感度なアンモニウム態窒素の窒素安定同位体比の定量法開発を試みた。

  • 天川 裕史, 田副 博文, 鈴木 勝彦
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G05 海洋における微量元素・同位体
    p. 33-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
    会議録・要旨集 フリー

    微量元素濃度ないし同位体比の分析目的で海水を長期間保存する場合、プラスチック製の瓶類やタンク類ないし折りたたみ可能なコンテナ類が保存容器として用いられることが多い。一般的には、採水後海水を保存容器に移し、速やかに酸を添加し酸性にすれば容器壁への吸着が起きず、正確な測定が長期にわたり可能と考えられている。しかしながら、希土類元素(REE)の濃度に関しては使用する容器によっては一部の元素が予想される濃度に比べ低い値を示す傾向があるとの指摘もある。そこで、幾つかの異なった容器に保存した海水のREE濃度を測定し、予想されるREEパターンからの変化(ずれ)に関して検証を行った。その結果、低密度ポリエチレン製の折りたたみ可能なコンテナに保存した海水試料のYbとLuが予想される濃度と比較し、低い値を示す傾向が認められた。

  • 則末 和宏, 松原 由奈, 中川 正親, 小畑 元, 岡村 慶, 永石 一弥, 石川 剛志
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G05 海洋における微量元素・同位体
    p. 34-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
    会議録・要旨集 フリー

    現代の海洋には人間活動によって負荷されたPbが存在しており,多くの海域で人為起源Pbが天然由来のバックグラウンドを大きく上回っている。人為起源Pbの発生源は様々であり,発生源に応じて特徴的な同位体比を示す。このため,海水中のPb同位体比を調べることにより,大気から海洋表層へもたらされた人為起源Pbの供給源を推定することができる。また,海水中のPb濃度と同位体比の時系列データがサンゴの骨格に記録されており,現在の海水中のPb の挙動を解析する上で有用な情報となる。このように,Pb同位体比は,人為起源の汚染物質の指標として重要であるのみならず,海洋物質循環の理解にも有用である。このような学術的な特性を有するPb同位体に着目した海洋化学研究を行う。

S02 地球メタロミクス
  • 平田 岳史, 槇納 好岐, 山下 修司, クー フィーシン
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: S02 地球メタロミクス
    p. 35-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
    会議録・要旨集 フリー

    高周波誘導結合プラズマイオン源質量分析法(ICP-MS法)は、大気圧高温プラズマをイオン源として用いた質量分析計であり、高感度かつ迅速な元素分析・同位体分析法として様々な分野で広く活用されている。 最近のICP-MS装置の分析性能の向上、特に分析感度やマトリックス耐性の向上に伴い、レーザー照射径やレーザーエネルギー(掘削深さあるいは速度を決定する因子)の自由度が広がり、固体試料の局所分析(約2µm~30µm程度)や深さ方向分析、さらには、試料の広領域(数百ミクロン角〜1cm角程度)の平均組成分析や元素イメージング分析(マッピング分析)が可能となった。 本講演では、高速多点アブレーション法を用いた固体地球化学試料の元素分析の実際と、高速多元素同時イメージング分析法やナノ粒子用ICP-MSを組み合わせたハイブリッドイメージング分析法に向けた装置開発の現状を紹介する。

G10 地球化学のための最先端計測
  • 田中 剛, 李 承求
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G10 地球化学のための最先端計測
    p. 36-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
    会議録・要旨集 フリー

    本研究では、ネオジム硝酸溶液とサマリウム硝酸溶液を混合、各200ppbを含む溶液を撹拌し、韓国地質資源研究院に設置されているネプチューン・プラスMC-ICP-MSで両元素の複数の同位体( L3:142Nd, L2:143Nd, L1:144Nd+144Sm, C:145Nd, H1:146Nd, H2:147Sm, H3:148Sm+148Nd, H4:149Sm )を同時にスキャンした。これまで、ピークの揺らぎは、トーチあるいは溶液吸入などの揺らぎと見なされてきたことであろうが、ピークトップの揺らぎを拡大観察した結果、Nd同位体とSm同位体の揺らぎは元素ごとに独立していることがわかった。これは、とりもなおさず、溶液の中でNdとSmが相互に不均質に分布していたことを示す。吸入チューブの内径が100μmほどであることから、不均質さも同様なスケールであったと考えられる。数十秒の振盪の後、ピークの凸凹に違いは見分けられなくなった。

  • 若木 重行, 手塚 勇輝, 宮崎 隆, 堀川 恵司
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G10 地球化学のための最先端計測
    p. 37-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
    会議録・要旨集 フリー

    海水中のBa同位体組成には3次元的な分布が存在する。海洋の表層では海水からバライトが生成する際にBa同位体分別が生じ(von Allmen et al, 2010)、表層海水のBa同位体比は重い値を、深層水のBa同位体比は軽い値を示す。また、海水Ba安定同位体比は、河川からのBa供給に対して敏感に変化することから、塩分指標としての可能性が注目されている。海水のBa同位体比変化幅は小さいため、その検出には精度・確度の高い同位体分析手法が必要である。本研究では、134Ba-136Baスパイクを使用したダブルスパイク法とTIMSを組み合わせ、Ba安定同位体組成を高精度・高確度に分析する手法の開発を行った。本研究の手法によるδ138/134Ba値の分析再現性は、± 0.019であった。標準海水および富山湾で採水された表層水および深層水の分析から、海水中のBa同位体比の変化は本手法で十分検出可能なことがわかった。

  • 中田 亮一, 永石 一弥
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G10 地球化学のための最先端計測
    p. 38-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
    会議録・要旨集 フリー

    セリウム (Ce)安定同位体比は新たな古海洋酸化還元指標であるが、MC-ICP-MSを用いた測定では酸化物イオンの生成がネックであり、これまではWet Plasmaの条件下で試料ガス流量を減らして測定されていた。試料ガス流量の減少はCeイオン信号の減少に繋がるため、分析精度向上には多量の試料を用いる必要があった。そこで本研究では脱溶媒試料導入装置を用い、分析条件を最適化することで、必要試料量の減少化、ならびにCe安定同位体比分析の高精度・高感度化に関する検討実験を行った。

  • 坪井 寛行, 板井 啓明, 高橋 嘉夫
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G10 地球化学のための最先端計測
    p. 39-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
    会議録・要旨集 フリー

    これまで、ルビジウム (Rb) が層状珪酸塩中で内圏錯体を形成すると予測し、実際にバーミキュライト、イライトに対してRbは内圏錯体を形成し、その吸着に伴ってRb安定同位体比の分別が起こることを実験的に検証してきた。このRb安定同位体比(δ87/85Rb)を用いた新規地球化学ツールの確立が本研究の目的である。海洋中において堆積物−海水間の反応によりRb安定同位体比分別が起こるのであれば、堆積物−海水−火成岩間で異なるδ87/85Rbを示す可能性がある。実際に標準岩石試料は火成岩-堆積岩間で異なるδ87/85Rbを示した。海洋中における層状珪酸塩への吸着により低いδ87/85Rbを持った海洋堆積物・堆積岩が沈み込んでマントルまで供給された場合、地殻由来物質がリサイクル成分としてマントル物質に含まれるかどうかをδ87/85Rbによって検証できると期待される。

  • 志村 まり
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G10 地球化学のための最先端計測
    p. 40-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
    会議録・要旨集 フリー

    微量元素が生命活動に深く関わっていることは古くから知られており、学術的にも生体の元素情報はメタボロミクス(メタロミクス)として認識され、生物分野での研究は盛んになった。医学分野では、亜鉛や鉄の欠乏性や金属中毒症など、産業医学、栄養学誌でよく取り上げられているが、臨床医学では、ミネラルやヘモグロビンなど元素関連蛋白質を扱った論文に限定される傾向にある。体内の元素環境は、食事、飲料水、生活環境を反映することから、加齢、生活習慣病、がんなどの慢性疾患の解明で元素情報が貢献する余地がある。私たちは、阪大工学部、理化学研究所との共同研究で確立した、シンクロトロン放射光による走査型蛍光エックス線顕微鏡(SXFM, SPring-8,理化学研究所)を用いた生物•医学応用を行っている。本発表では、SXFMによる細胞内元素イメージングの紹介に加えて、元素情報の生物医学分野での有用性も議論したい。

  • 佐藤 有汰留, 阿部 穣里, 波田 雅彦
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G10 地球化学のための最先端計測
    p. 41-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
    会議録・要旨集 フリー

    バクテリア中の酵素による6価ウランの4価ウランへの生物性の還元では、238Uが4価ウランに分別される。一方、非生物性の還元では、6価ウランの溶液からの除去速度が遅い場合のみ、238Uが4価ウランに分別される。天然試料のウラン同位体比から太古の生物活動を理解するためにも、生物性および非生物性還元における分別機構の違いの解明は重要である。本発表では、多段階反応の同位体分別モデル(定常状態モデル)を導入し、ウラン還元に伴う同位体分別の機構を、理論計算と実験値を基に考察する。これにより、生物性還元では、基質の酵素への吸着が非平衡、あるいは6価-5価還元の逆反応の速度論的同位体効果が負となる可能性が示唆された。また、同位体分別を示す非生物性還元においても、定常状態モデルを用いた議論が可能であることを示す。さらに、計54種のウラン化合物に対して理論計算を行い、6価-4価間における最大の分別が約3‰となることを示した。

  • 中村 淳路, 岡井 貴司, 太田 充恒
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G10 地球化学のための最先端計測
    p. 42-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
    会議録・要旨集 フリー

    標準試料の供給を目的として、産業技術総合研究所は旧地質調査所の時代から岩石を粉末状にした地球化学標準物質を発行してきた。現在、地球化学標準物質はISO(国際標準化機構)が定めるトレーサビリティに関する規定に従って値付けを行い、共同分析によって認証値を付与して発行されている。本研究では滴定法による二価鉄の分析法について、試料処理の各過程の分析条件の再検討を行った。二価鉄の分析はまず試料を加熱した砂浴上の白金るつぼ中で硫酸とフッ化水素酸により分解し、その後、二クロム酸カリウム水溶液による滴定によって二価鉄の量を決定する。本研究ではまず酸分解について、最適な砂浴の温度と分解時間を求めた。次に試料量を変化させ、二価鉄量に対する試料量の影響を調べた。その結果、酸分解中に溶液がるつぼから溢れることがない試料量の範囲において、試料量が多いほど二価鉄量が多くなる傾向があることが明らかとなった。

  • 高橋 嘉夫, 山田 真也, 関澤 央輝, 板井 啓明, 田中 雅人, 栗原 雄一, 柏原 輝彦, 坂田 昂平, 菅 大暉, 三浦 輝, 栗栖 ...
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G10 地球化学のための最先端計測
    p. 43-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
    会議録・要旨集 フリー

    本研究では、地球化学試料中の微量元素の化学種を明らかにするために、高いエネルギー分解能を持つX線検出器である超伝導転移端センサー検出器(TES)を用いて蛍光XAFS法を得た。その結果、半導体検出器では測定困難だった試料についてXAFSが得られ、この方法が蛍光XAFSの適用範囲を大きく拡大するものであることが分かった。

  • 菅 大暉, 長澤 真, 関澤 央輝, 新田 清文, 山田 真也, 早川 亮大, 大井 かなえ, 須田 博貴, 竜野 秀行, 岡田 信二, 奥 ...
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G10 地球化学のための最先端計測
    p. 44-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
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    希土類元素(REE)は、地球惑星科学における代表的な微量元素トレーサーであり、様々な分野で広範に利用されている。加えて、金属資源分野や放射性廃棄物分野でも重要な元素でもあり、環境中での挙動にも関心がもたれている。こうしたREEの地球表層での挙動を分子レベルから理解するために、我々は、X線吸収微細構造(XAFS)法を用いたREEの化学種分析を様々な系で行ってきた。本研究で報告するのは、SPring-8 BL37XUで、多元素混合ガラス標準試料であるNIST試料を用いて、(i)40 keV以上の高エネルギー領域のX線サブマイクロンビームを利用した蛍光X線(XRF)マッピング-XAFS分析をREEのK吸収端に対して初めて適用した結果と、(ii)L吸収端を対象とした超伝導転移端センサー検出器(TES)による蛍光XAFS実験を、米国標準技術局(NIST)製の240素子(X線吸収体はビスマス)のTESを用いて行った結果についてである。

G08 生物と有機物の地球化学
  • 尾崎 和海
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G08 生物と有機物の地球化学
    p. 45-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
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    生命圏の活動レベルは、地球表層での生元素(C, N, P, O, S)循環と密接に関連し大気組成(本講演では酸素O2、二酸化炭素CO2、メタンCH4に着目する)に影響するとともに、気候状態や水圏の化学状態を通して影響されてきた.しかしながら、地球史を通じた生命圏の活動レベルやその大気組成への影響についてはまだよくわかっていない.とくに、地球生命圏は、エネルギーや電子供与体(H2O, H2, Fe2+, H2S,…)および栄養塩といった制限要因を克服することで、それまでとは質的に異なる物質循環(ひいては大気組成)を形成してきたと考えられるが、物質循環に基づく理論的見地からこの問題を定量的に扱う研究はほとんど行われていない.本講演では、太古代から顕生代の大気進化について、各時代の生命圏活動レベルに焦点を当てながら研究成果を紹介する.

  • 岡崎 友輔
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G08 生物と有機物の地球化学
    p. 46-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
    会議録・要旨集 フリー

    海洋や湖沼の水中には1 mLあたり104–107細胞もの浮遊細菌(Bacterioplankton)が存在し、微生物食物網およびそれを介した物質循環における中心的役割を担っている。国内では琵琶湖や支笏湖、海外ではバイカル湖や五大湖に代表される、貧–中栄養の全循環の大水深淡水湖において、深水層(水温躍層以下の水層)は湖体積の大部分を占める有酸素・低水温・無光の水塊であり、深海と同様、比較的難分解の有機物の蓄積と分解、硝化・メタン酸化等の重要な物質循環プロセスの場であると考えられている。しかしながら、その中核を担う有酸素深水層の細菌の多様性や生態に焦点を当てた研究はほとんど無く、その実態は未解明である。本発表では、その全貌を明らかにするべく演者がこれまで取り組んできた研究を紹介する。

  • 山口 保彦, 霜鳥 孝一, 今井 章雄, 尾原 禎幸, 七里 将一, 岡本 高弘, 早川 和秀
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G08 生物と有機物の地球化学
    p. 47-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
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    湖沼や海洋の溶存有機物(DOM)の特性・動態については、分子サイズと生分解性が関連する傾向がこれまで明らかになっており、「サイズ-反応性連続体モデル」が提唱されている。しかし、天然レベル濃度の水圏DOMについて、分子サイズ別の生分解プロセスを直接調べた研究は乏しい。本研究では、琵琶湖の天然湖水DOMについて、長期生分解実験(205日間)により分子サイズ別に生分解速度を推定した結果を示す。DOM試料について、全有機炭素計を接続したサイズ排除クロマトグラフィー(TOC-SEC)で分析することで、時間経過に伴うDOM分子サイズ分布の変化を有機炭素量ベースで詳細に追跡した。分子量が100kDa程度の高分子DOMは、分子量が数百~数千Da程度の低分子DOMよりも生分解速度が速く、実験開始後101日が経過した時点で、高分子DOMピークはほぼ消失した。本発表では、こうした結果と、従来のモデルとの整合性を議論する。

  • 梶田 展人, 中村 英人, 川幡 穂高
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G08 生物と有機物の地球化学
    p. 48-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
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    ハプト藻イソクリシス目Noëlaerhabdaceae科が合成する長鎖アルケノンの不飽和度は、海洋表層水温の指標として広く利用されてきた。一方、湖沼に生息するIsochrydaceae科由来のアルケノン温度計を湖沼堆積物コアへ応用した例は少ない。今回の発表では、湖沼アルケノンを用いた古環境研究の現状と問題点について整理を行い、今後の発展に必要な事項について議論したい。 ハプト藻の単離株の培養実験より、IsochrydaceaeはNoëlaerhabdaceaeに比べて遺伝的多様性が大きく、種間でアルケノン組成の特徴および温度換算式が大きく異なる。環境DNA分析により、湖によっては異なる遺伝的グループにまたがるハプト藻の遺伝子が混在することが明らかになり、温度換算式の選択が難しいことが最大の課題である。 本発表では、新たに発見された、青森県鷹保沼(汽水)および秋田県一の目潟(淡水)のアルケノンの特徴およびについても報告を行い、これらの湖沼で温度復元が可能かどうか検討する。

  • 沢田 健, 青柳 治叡, 小林 まどか, 風呂田 郷史, 中村 英人
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G08 生物と有機物の地球化学
    p. 49-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
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    陸上高等植物に由来するテルペノイドは植物分類によって多様な構造を持ち、その起源をより限定できるため、陸源物質の海洋への輸送過程、その供給源や後背地の植生などを評価するための強力な指標となり得る。深海堆積物には現生植物が生合成する官能基をもった生体テルペノイドがおもに検出されるが、続成・熟成作用を受けたテルペン炭化水素のような続成テルペノイドも極微量ながら有意に見出される。このような続成テルペノイドは、中国内陸部の砂漠地域などの後背地において続成作用を受けた高熟成堆積岩・土壌を供給源としていて、大気輸送ダストとして太平洋にもたらされていることが推定されている。また、森林火災などの燃焼によってもテルペン炭化水素が生成され、おもに大気経由で海洋に輸送されている。本講演では、北太平洋と北大西洋の堆積物中でのテルペン炭化水素を比較して、それらの起源と輸送過程、さらにそれらを用いた大気輸送指標および古気候学指標としての有用性について議論する。

  • 山口 晴香, 米田 穣, 近藤 修, 設楽 博己, 樋泉 岳二, 岡崎 健治
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G08 生物と有機物の地球化学
    p. 50-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
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    群馬県と長野県の遺跡から出土した縄文・弥生時代人歯のコラーゲン炭素・窒素安定同位体分析を行ったところ、縄文早期〜後期の資料と比べ縄文晩期〜弥生時代の資料ではδ13Cが平均3.9‰高かった。この変化の要因としてC4植物に分類され、高いδ13Cを有するアワやキビなどの雑穀(C4雑穀)が考えられたが、そのほかに海生貝類が挙げられた。コラーゲンとアパタイトの反映する栄養素が異なることと、雑穀と海生貝類では栄養素の組成に顕著な差異があることを踏まえ、C4植物と海生貝類の摂取の区別を行うモデルを構築した。縄文晩期〜弥生時代のコラーゲンおよび新たに測定したアパタイトの炭素同位体比実測値は、C4雑穀の寄与率を20-80%とした場合のC3植物食動物とC4雑穀の混合モデルと整合的な結果であった。ゆえに、縄文晩期〜弥生時代の試料ではC4 雑穀の摂取が示唆され、これは考古学の研究でアワやキビの栽培が推論されていることと整合的である。

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