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日本最大の活火山・富士山では、過去3200年間で100余りの火山噴出物が確認されているが、その噴出年代が確定しているものは約3割にも満たない。そのため、詳細な噴火履歴の解明のためには、時間分解能の高い山麓の湖底堆積物を用い、火山噴出物の年代推定を行う必要がある。ただしこれら湖では、噴火の影響で植物化石の産出が稀であり、これまで精度の高い年代モデルの構築が困難であった。そこで本研究では、河口湖の堆積物コア中の脂肪酸の化合物レベル14C年代測定を行い、富士山の火山噴出物の年代推定を試みた。カワゴ平テフラの上下層中のC16脂肪酸から推定されたリザーバー年代を基に、大室スコリアの噴火年代を推定したところ、既報の年代値(3072–2798 cal BP)とよい一致を示し、同手法が富士山の噴火履歴の解明に有効であることが明らかとなった。