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深海底のFe-Mn酸化物には地殻平均の約55,000倍のTeが濃縮している。Teは有用なレアメタルであり,この高濃縮メカニズムとそれが進行する海域を解明することは海洋化学の学術面や海洋資源戦略の面で重要である。これまでTe高濃縮機構の解明のためにFe-Mn酸化物等の固相を中心とした分析・解析に基づく研究が行われてきた。一方で高濃縮機構に深く関わる海水中Teの酸化還元化学種Te(IV),Te(VI)の知見は極めて乏しい。また海水中Te分析法の一つであるMg(OH)2共沈-水素化物発生原子吸光法は,使用する試薬がアンモニアのみであり,ブランク値を低く抑えやすく,Te化学種を定量的に濃縮することが可能である一方,多数の試料分析に基づく海洋研究に適さないと考えられる。そこで本研究では主にMg(OH)2共沈によるTe化学種の濃縮,及びイオン交換樹脂カラムによるTeの分離に関する基礎検討を行った。