福島原発事故により放出された放射性核種は、2023年現在でも環境中に残存している。本研究では、陸生態系内での放射性核種の動態に関する考察の一例として、福島県で捕獲されたニホンザル、および土壌について129I濃度、および137Cs濃度の測定を行った。土壌は深度別に測定を行い、土壌表層における放射性核種の半減期と、サル中放射性核種の生態学的半減期との関係性等を検討した。その結果、ニホンザル中の129I/127I比は捕獲日が新しくなるにつれ減少しており、その速度は表層土壌における129Iの減少速度と近いことが明らかになった。またサル各個体の129I/127I比と捕獲地点から最も近い地点における土壌試料の129I/127I比とを対応させると、両者は正の相関を持つことも明らかになった。総じて、ニホンザル中の129I量は表層土壌における129Iの減衰や汚染程度を反映していることが示唆された。