日本地球化学会年会要旨集
2023年度日本地球化学会第70回年会講演要旨集
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G5 古気候・古環境解析セッション
南半球の海洋堆積物に記録された白亜紀-古第三紀境界のオスミウム同位体比変動とその化学層序学的意義
*黒田 潤一郎太田 映石川 晃鈴木 勝彦Tejada Maria L.G.大河内 直彦
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p. 98-

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抄録

白亜紀-古第三紀境界(K-Pg境界; 66.0 Ma)は,地球史上最も顕著な生物大量絶滅イベントの一つに数えられる.メキシコ・ユカタン半島に巨大クレーターを作った天体衝突が大量絶滅の第一要因とされている.一方,インド大陸では白亜紀末から暁新世にかけて広大な洪水玄武岩(デカントラップ)が形成された.この洪水玄武岩体の噴火によっても地球温暖化が引き起こされたことが判明している.洪水玄武岩と天体衝突により,K-Pg境界イベントは複雑かつ科学的興味に満ちた研究対象となってきた.私たちは,南半球中・高緯度を中心とした世界各地の海洋底で掘削回収された堆積物中のK-Pg境界の層準について,高解像度で放射性起源オスミウムOs同位体組成と白金族元素組成を分析するプロジェクトを進めている.Os同位体比は,地球外物質とマントル物質いずれも低い同位体比を持つため,その海洋中での経時変化のパターンを正確に復元することで,天体衝突と洪水玄武岩の両方の記録を捉えることが可能となる[1-3].それにはまず,すでに得られているK-Pg境界のOs同位体比変動パターンを精査し,その広域同時性を評価する必要がある.天体衝突に伴う白金族元素濃度のピークや同位体記録の低下は極めてシャープであり,同時性は疑いようがない[1,3].一方,デカントラップ形成に伴うOs同位体比変動は,その同時性について議論の余地が残る.今回の発表では,デカントラップから比較的近距離~中距離(<12000 km)にあった豪州周辺海域(メンテレー海盆とロードハウライズ)で掘削された堆積物のOs同位体比と白金族元素組成の記録を紹介する.まず,Os同位体記録からK-Pg境界の天体衝突層準の有無(=地層の連続性)について評価し,その化学層序学的意義を議論する.ロードハウライズの堆積物では,短期間のハイエイタスにより天体衝突層準が欠損していた一方,メンテレー海盆の堆積物は欠損のない天体衝突層準の保存を示す同位体記録が認められた.また,各サイトのK-Pg境界層の上下層準のOs同位体変動パターンから,デカン洪水玄武岩の寄与やタイミングを評価し,これら2サイトの結果を古典的にK-Pg境界のOs同位体比の復元に使われてきたサイトの再分析結果と比較する.文献1Ravizza, G. & Peucker-Ehrenbrink, B. (2003) Science 302, 1392-1395. 2Robinson, N. et al. (2009) Earth Planet. Sci. Lett. 281, 159-168. 3Ravizza, G. & VonderHaar, D. (2012) Paleoceanogr. 27,

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