日本地球化学会年会要旨集
2024年度日本地球化学会第71回年会講演要旨集
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G5 古気候・古環境解析
宇宙線生成核種を用いた過去の太陽面爆発の探索
*三宅 芙沙
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p. 101-

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抄録

地球に降り注ぐ宇宙線は、大気原子核と核反応を起こし、様々な種類の宇宙線生成核種を生成する。宇宙線生成核種の中で14C、10Be、36Clはその寿命が、5730年、1.4 × 10^6 年、3×10^5 年程度と長く、年輪や氷床コアといった天然アーカイブ試料に保存された宇宙線生成核種濃度を調べることで、過去の宇宙線変動が推定されている。これらの宇宙線生成核種は、通常は太陽系の外に起源をもつ銀河宇宙線によって生成されるが、太陽の突発的な太陽面爆発現象(太陽フレア、コロナ質量放出)によって放出される太陽高エネルギー粒子(Solar Energetic Partcle:SEP)もその生成に寄与している。したがって、過去に極めて規模の大きい極端SEPイベントが生じていた場合、 宇宙線生成核種濃度の急増(スパイク)として記録される。これまでに、樹木の14Cや氷床コアの10Be、36Clの高時間分解能の分析から、極端SEPイベントによって生じたと考えられる宇宙線生成核種スパイクが複数報告されている(e.g., 774年、993年、紀元前660年、紀元前7176年など)。核種増加量から、元のSEPイベントの規模は、過去約70年間の現代観測で検知されている最大のSEPイベント(1956年)の数十倍と見積もられている。このような極端太陽イベントが、仮に今日生じると、現代社会に対して、人工衛星の故障や通信障害といった宇宙天気に関する甚大な影響があると考えられている。将来生じる恐れのある極端太陽イベントのリスク評価を行うためには、宇宙線生成核種データから過去に生じた極端太陽イベントの発生頻度など発生特性を調査することが重要である。また、宇宙線生成核種スパイクは、過去の太陽活動の調査だけではなく、タイムマーカーとして超高精度な年代測定「スパイクマッチング」に適用することが可能であり、近年、年代測定分野への応用が進んでいる。このような背景から、樹木の14Cや氷床コアの10Be、36Clの高時間分解能データ取得が近年大幅に進展している。本講演では、宇宙線生成核種を用いた過去のSEPイベントの最新の探索状況について紹介する。

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