本研究では、20年ほど前からpHの上昇が始まり、中性化することによって湖内の一次生産をはじめとした生物活動が年々活発化している可能性が予想される猪苗代湖(福島県)において、2022-2023年に湖水調査を実施して湖内の総硝化速度や総同化速度などの窒素循環速度を三酸素同位体組成法(Tsunogai et al. 2018)を用いて定量化し、これを2014-2015年の結果と比較することで変化の実態を解明した。その結果、猪苗代湖の一次生産は活発化しているが、硝化は未だに活発化しておらず、湖水中に豊富だった窒素栄養塩の多くは有機態窒素となって堆積物に蓄積しているものと考えられた。