原始惑星系円盤では、円盤表面の化学反応や微惑星内部の熱水反応などのさまざまな生成条件で有機物が生成される。これらの有機物は、高い固着特性によって、円盤内のダスト合体成長を促進した可能性がある。本研究では、円盤中の異なる化学プロセスで形成される複数の有機物模擬物質を作成し、その化学構造を明らかにした。さらに、これらの有機物模擬物質の固着特性を決定する弾性率と表面エネルギーを測定し、その化学構造と温度依存性を実験的に明らかにした。その結果、官能基に富む有機物に比べて芳香族に富む有機物の表面エネルギーが比較的低く、弾性率が高いという結果を得た。また、表面エネルギーと弾性率の温度依存性はアレニウスの式に従い、低温ほど表面エネルギーが減少し弾性率が増加することが明らかになった。本研究の結果は、化学構造依存性に関しては議論の余地があるものの、高温ほど有機物の固着特性が増加することを示唆する。このことは、原始惑星系円盤中のH2O雪線の内側の高温領域において、有機物がダスト合体成長を促進した可能性を示唆する。