主催: 日本地球化学会年会要旨集
会議名: 2024年度日本地球化学会第71回年会講演要旨集
回次: 71
開催日: 2024/09/18 - 2024/09/20
p. 199-
ルビジウム(Rb)は1価の親石元素であり、高い不適合性を持ち、マントルに比べて地殻中に濃縮されている。Rbは、85Rb (72.17 %) と 87Rb (27.83 %)の2種類の安定同位体を有し、Rb安定同位体比(δ87Rb)は、Rbの高い不適合性や揮発性から、太陽系内部の惑星の起源や地球のマントル組成の制約といった、地質学的プロセスの解明に有用な元素だと考えられてきた(例えばPringle and Moynier, 2017)。マグマ進化過程におけるRb安定同位体分別については、SiO2に乏しい苦鉄質岩からSiO2に富む珪長質岩に変化するにつれて、δ87Rbが上昇する傾向が報告されている (Zhang et al., 2023)。一方、マグマ進化がRb同位体比に影響を与える可能性は少ないことを指摘もある (Wang et al., 2023)。このように、マグマ進化過程におけるRb同位体比の影響については統一的な見解は得られていない。Zhang et al. (2023) は、分析した火成岩の起源や進化過程を考察に含めておらず、Wang et al. (2023) は中央海嶺で生成された火成岩でのみ議論を展開している。そこで本研究では、マグマの起源や進化過程の違いがδ87Rb変動に及ぼす影響下名を目的とし、地質調査所 (GSJ) やUSGSが頒布する標準岩石試料について、マルチコレクター型ICP質量分析計を使用し測定した。標準岩石試料のうちSiO2に富むJG-2(花こう岩)やJR-2(流紋岩)のδ87Rbは、それぞれ−0.22±0.05‰、−0.23±0.04 ‰の範囲で変動し、Hu et al. (2022) が提案した上部大陸地殻の平均値 (−0.14±0.01‰) と比べて有意に低値であった。SiO2に富む火成岩に多く含まれるカリ長石 (JF-1) も、δ87Rbが−0.20±0.02 ‰であり、マグマ進化過程の中でδ87Rbが上昇する可能性が示唆された。JG-2とJR-2は、ともにRb濃度が300 ppmを超えており、Rbが濃集するマグマ進化過程に着目する必要があると考えられる。一方、JA-2 (安山岩) は、δ87Rb が0.06±0.05‰であり、上部大陸地殻の値より有意に高値であった。JA-2は、瀬戸内火山帯の高マグネシウム安山岩で、堆積物メルトが起源と解釈されている(例えばShimoda et al., 2003)。以上のことから、マグマ進化過程におけるRb安定同位体分別については、Zhang et al. (2023) が指摘したようにRb同位体比はマグマ進化過程に影響され、その起源物質の影響を受けると考えられる。