紀伊半島から〜四国にかけて土壌中水銀の濃度と安定同位体比を分析した。これまでに報告した大阪平野周辺の土壌中水銀濃度と合わせて600点を超える地点で濃度分布をマッピングした。その結果、中央構造線より南の紀伊半島中央部から四国に水銀濃度の高い地点が帯状に分布していた(中央値:198µg/kg;平均値:275µg/kg)。また、これまでに分析した10試料の水銀同位体比は大阪平野の断層直近の地下水中の水銀安定同位体比とほぼ同じか、それよりも小さい値の範囲(d202Hgで-2.5 ~-0.4 ‰)にあった。また、光化学反応や生化学反応による質量非依存型の同位体分別作用は見られなかった。これらのことから、地質由来の水銀が気液分離などによる分別作用を伴って地表に放出されていると推定された。