コンドライト中の硫黄のバルク存在度は,CIコンドライトを除き,太陽組成より低く,原始惑星系円盤での元素分別があったことが示唆される。その一因として,トロイライト(FeS)の分解蒸発が考えられる.トロイライトの分解蒸発に関する先行研究は高温条件で実験がおこなわれており,原始惑星系円盤での蒸発条件に近い,より低温への外挿が可能であるか自明ではない。本研究では, Canyon Diablo鉄隕石中のFeSを粉末化して,出発物質として用い,先行研究(>1173 K)より低温の1123-973 K,水素圧0.2-5 Paの条件で蒸発実験をおこなった。蒸発残渣は金属鉄であり,硫黄が選択的に蒸発していること,また,蒸発は表面律速で進行していることが示唆された。得られた蒸発速度は先行研究の低温への外挿値と概ね一致した.また,水素圧依存性も,先行研究同様に,熱力学からの予測に比べて小さく,H2SだけでなくS2としての蒸発も寄与していると考えられる。