情報地質
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論説
衛星画像データを用いた地表物性推定における大気影響の検討と推定精度向上の一提案
-LANDSAT TM熱赤外データによる海面温度推定のケーススタディ-
田村 綾子小池 克明小林 茂樹田中 健路
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2007 年 18 巻 1 号 p. 15-28

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抄録

 光学センサ画像から地表物性を高精度に把握するための第一段階として,データ蓄積の多いLANDSAT TMバンド6データからの海面温度推定法を検討し,有明海に適用した.DN値に含まれる大気効果を軽減し,気象データを考慮した海面温度推定法として,DN値補正法,気温補正法,および座標・水深・DN値を変数とする多変量回帰モデルの3つを考案した.多変量回帰モデルでは,SONDEデータによる高層湿度を考慮して補正したDN値,および気温補正法と同様に気温を推定に用いた.これら3つの手法の中では,多変量回帰モデルによる海面温度の推定誤差が最も小さく,海面温度分布の特徴を明確にできることがわかった.よって,熱赤外衛星データを用いた地表温度推定問題では,気温と湿度の気象情報が不可欠である.また,大気効果を検討するために熱放射エネルギーの伝達をモデル化した結果,センサ入力の全エネルギーに占める海面からのエネルギーの割合は,海面温度に比べて大気の代表的な気温が小さい,大気に比べて海面の放射率が大きい,およびエネルギー伝達関数が大きい,という3つの条件で大きくなるのが明らかになった.これらは,海面温度の実測値と推定値との相関係数が高いシーンの気象条件に対応すると考えられる.さらに,その割合は海面温度と気温との差の増加とともに直線的に増加すること,および海面の放射率が相対的に小さいほどエネルギー伝達関数に強く依存することが見出せた.

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