情報地質
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18 巻, 1 号
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論説
  • -LANDSAT TM熱赤外データによる海面温度推定のケーススタディ-
    田村 綾子, 小池 克明, 小林 茂樹, 田中 健路
    2007 年 18 巻 1 号 p. 15-28
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/03/23
    ジャーナル フリー
     光学センサ画像から地表物性を高精度に把握するための第一段階として,データ蓄積の多いLANDSAT TMバンド6データからの海面温度推定法を検討し,有明海に適用した.DN値に含まれる大気効果を軽減し,気象データを考慮した海面温度推定法として,DN値補正法,気温補正法,および座標・水深・DN値を変数とする多変量回帰モデルの3つを考案した.多変量回帰モデルでは,SONDEデータによる高層湿度を考慮して補正したDN値,および気温補正法と同様に気温を推定に用いた.これら3つの手法の中では,多変量回帰モデルによる海面温度の推定誤差が最も小さく,海面温度分布の特徴を明確にできることがわかった.よって,熱赤外衛星データを用いた地表温度推定問題では,気温と湿度の気象情報が不可欠である.また,大気効果を検討するために熱放射エネルギーの伝達をモデル化した結果,センサ入力の全エネルギーに占める海面からのエネルギーの割合は,海面温度に比べて大気の代表的な気温が小さい,大気に比べて海面の放射率が大きい,およびエネルギー伝達関数が大きい,という3つの条件で大きくなるのが明らかになった.これらは,海面温度の実測値と推定値との相関係数が高いシーンの気象条件に対応すると考えられる.さらに,その割合は海面温度と気温との差の増加とともに直線的に増加すること,および海面の放射率が相対的に小さいほどエネルギー伝達関数に強く依存することが見出せた.
  • 村上 英記, 山口 覚
    2007 年 18 巻 1 号 p. 29-37
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/03/23
    ジャーナル フリー
     都市近郊で観測された地電位データには人工ノイズが多く含まれる.ノイズ除去のために参照信号を使うリモートリファレンス処理はデータの質を飛躍的に改善するが,少なくとも一カ所遠隔地で並行観測が必要になる.参照データがない場合,多変量解析手法がしばしば使われる.本稿では,多変量解析の一手法である独立成分分析(ICA)をノイズの大きい地電位データに適用し,微弱な信号の分離を試みた.独立成分分析は多変量データを相互に統計的に独立で非正規な特性を持つ信号に分離する手法である.野島断層での注水実験で得られた地電位データにICAを適用したところ,注水に同期した微弱な地電位変化を分離できた.地電位並行観測データを使った以前の解析や主成分分析の結果に比べて,分離された信号は注水の圧力や流量の変化に良く対応していた.ICAはノイズの大きな環境下で計測された地電データから微弱な信号を分離できる有効なツールになる可能性が示された.
  • トラン バン アン, 升本 眞二, ラガワン ベンカテッシュ, 塩野 清治
    2007 年 18 巻 1 号 p. 3-13
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/03/23
    ジャーナル フリー
    ベトナムの首都ハノイ市は,Red Riverの氾濫原に位置し,平均標高は20m以下である.ハノイ市では人口の急激な増加に伴う地下水の汲み上げにより,顕著な地盤沈下が起こっている.地盤沈下の状況は測量でモニタリングされてきたが,広域で高密度な測量を実施するには時間と労力が必要である.そのため,本研究ではそれを補う方法としてSAR差分インターフェロメトリを利用した.都市域での地盤沈下の空間的な広がりを検出するために,3つの異なる時期に収集したイメージから地形変化を求める3-パス差分インターフェロメトリ法を採用した.2つのインターフェロメトリックペア(インターフェログラム)を作成するために1995年~1998年にえられた3つのJERS-1のLバンドのSARイメージを用いて,市街地と郊外のおよそ400 km2の地域を解析した.Red River,Tay湖および郊外の植生のある地域における差分インターフェロメトリックフェーズにはノイズが多かったが,市街地では地盤変動の特徴を明瞭に検出できた.地盤沈下速度はTay湖近くの地域で2.7cm/年,市街地の南東部のMinh Khaiでは3.3 cm/年であった.この結果は1994年~1995年のTay湖やRed River周辺の水準測量で得られた急激な地盤沈下の測量結果(1.3-1.8 cm/年)と矛盾しない.市の南部ではJERS-1データではコヒーレンスが低いために,測量データで著しい地盤沈下が観測されているPhap VanやVan Dien周辺での地盤沈下は抽出できなかった.以上の結果から,コヒーレンスの高い地域については,Lバンドイメージはハノイ市の地盤沈下のモニタリングに実用できると結論した.
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