情報地質
Online ISSN : 1347-541X
Print ISSN : 0388-502X
ISSN-L : 0388-502X
論説
JERS-1の SARインターフェロメトリによって検出されたハノイ市の地盤沈下の空間分布
トラン バン アン升本 眞二ラガワン ベンカテッシュ塩野 清治
著者情報
ジャーナル フリー

2007 年 18 巻 1 号 p. 3-13

詳細
抄録

ベトナムの首都ハノイ市は,Red Riverの氾濫原に位置し,平均標高は20m以下である.ハノイ市では人口の急激な増加に伴う地下水の汲み上げにより,顕著な地盤沈下が起こっている.地盤沈下の状況は測量でモニタリングされてきたが,広域で高密度な測量を実施するには時間と労力が必要である.そのため,本研究ではそれを補う方法としてSAR差分インターフェロメトリを利用した.都市域での地盤沈下の空間的な広がりを検出するために,3つの異なる時期に収集したイメージから地形変化を求める3-パス差分インターフェロメトリ法を採用した.2つのインターフェロメトリックペア(インターフェログラム)を作成するために1995年~1998年にえられた3つのJERS-1のLバンドのSARイメージを用いて,市街地と郊外のおよそ400 km2の地域を解析した.Red River,Tay湖および郊外の植生のある地域における差分インターフェロメトリックフェーズにはノイズが多かったが,市街地では地盤変動の特徴を明瞭に検出できた.地盤沈下速度はTay湖近くの地域で2.7cm/年,市街地の南東部のMinh Khaiでは3.3 cm/年であった.この結果は1994年~1995年のTay湖やRed River周辺の水準測量で得られた急激な地盤沈下の測量結果(1.3-1.8 cm/年)と矛盾しない.市の南部ではJERS-1データではコヒーレンスが低いために,測量データで著しい地盤沈下が観測されているPhap VanやVan Dien周辺での地盤沈下は抽出できなかった.以上の結果から,コヒーレンスの高い地域については,Lバンドイメージはハノイ市の地盤沈下のモニタリングに実用できると結論した.

著者関連情報
© 日本情報地質学会
前の記事
feedback
Top