近年の計算機技術の発達と数理・情報科学の進展は,データから最大限に情報を抽出するための強力な情報処理技術を生み出し続けている.これらはデータ駆動型解析として様々な自然科学や工学分野,産業界において応用が進みつつある.本稿では,データ駆動型解析の基盤数理解析スキームであるベイズ推論とスパースモデリングについて,簡単に解説するとともに,著者らによる地質学分野へのデータ駆動型解析の適用事例について概観する.岩石組織のデータ解析には,時空間構造に関する先験的知識と物理化学モデルを客観的に逆解析に導入できるベイズ推論が特に有効であり,多元素からなる地球化学データの解析には,高次元データから本質的な次元を自動抽出するスパースモデリングが有効である.情報科学者と地質学者の密接な協働は,地質学的諸問題に有用な新たな解析手法群の開発につながり,データ駆動型解析の重要性は今後より一層増していくものと考えられる.