情報地質
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論説
可視・反射赤外スペクトルからの特徴量選択による複合試料中の端成分鉱物含有率の推定精度向上
岸本 将英 久保 大樹小池 克明
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2024 年 35 巻 3 号 p. 67-82

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抄録

可視・反射赤外域での反射スペクトルデータは,資源探査,風化度のマッピング,切羽の安定性評価などで求められる鉱物の含有率推定において有効な情報源である.本研究では,スケーリング効果や組成の違いを含む状況下における端成分鉱物の高精度な含有率推定法の特定を目的とする.そこで既知の端成分スペクトルから4種類の手法で含有率推定を行い,それらの精度を評価するとともに,次元削減法の一つである特徴量選択とLCR (Log and Continuum Removal) 処理を組み合わせることで推定精度を向上させる手法を提案する.対象試料は,方解石とモンモリロナイトを0~1の範囲で0.1間隔の質量比で混合したものである.また,用いた手法はFCLSU (Fully Constrained Least Square Unmixing),SCLSU (Scaled Constrained Least Squares Unmixing),LCR-CLSU (LCR-Constrained Least Square Unmixing),N-CLSU (Normalized-Constrained Least Square Unmixing)である.特徴量選択にはユークリッド距離を基準とする手法,およびRLDA (Regularization Linear Discriminant Analysis:正則化線形判別分析)により得られた主成分軸の絶対値を基準とする手法の2種類を適用した.推定精度は方解石含有率の推定誤差であるRMSEの小ささで評価する.結果として,SCLSUとLCR-CLSUは,スケーリング効果の影響をほとんど受けず,高精度な推定法であることが示された.また,LCR処理とRLDAによる波長選択の組み合わせは有効であり,推定精度が2倍程向上した.モンモリロナイト中の構造水は特定の波長の電磁波を吸収し,その量の違いは含有率推定精度に影響を強く及ぼす.RLDAによる波長選択法はその構造水の影響を受ける波長の重要度を比較的小さいと評価したため,推定精度が約2倍向上したと考えられる.本研究の提案手法は,方解石とモンモリロナイトの組み合わせに限らず,多くの端成分鉱物からなる混合試料にも適用可能であると考えられる.

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