抄録
林産業のうち製材及び木工作業従事者における呼吸器疾患, 特に気管支喘息の罹病状況を調査することにより, 木材粉塵に起因すると思われる職業性喘息の発症要因について検討を加えた. さらにその発症機序を示唆する様な典型例における血液・アレルギー学的検討も行なった. 気管支喘息の罹病頻度は, 木工作業群が4.9%, 製材群が1.1%であり, その発症要因としては従事者のアトピー素因の有無, 集塵装置等環境衛生の完備, 木材の材質や飛散粉塵の濃度・粒子径等に依存することが想定された. また, けやき材の木工作業従事者に発症した職業性喘息症例の発症機序は, 気道過敏性の獲得に加えIgEを介するI型アレルギー反応に依存することが想定された. 一方, 喘息以外の呼吸器疾患 (鼻炎・慢性気管支炎) も木工作業群で高頻度にみられ, 環境・粉塵等の因子の差が考えられた.