抄録
1990年3月, 栃木県宇都宮市大谷地区の大谷石採取場跡地が陥没した.陥没する直前には, ちょうど自然地震の前震に相当する振動 (野外AE) が認められた.我々は, 岩盤内部の進行性亀裂, 坑内の天井や壁から岩塊が剥離し落下する振動, 残柱の座屈時の振動などを振動 (野外AE) として定義し, データ処理システムを活用してその振動記録を処理することにより, 陥没の時間的・空間的な予測を行っている.振動観測データ処理システムの特徴は, 振動の時間変化を捉えるには発生頻度よりも活動指数が有効であること.振動の個別情報と観測点の情報, 並びに観測地区全体の地図情報を一体化したデータベースを構築していること.陥没の位置的な予測のために, 振動の推定発生位置と振動の規模を基本とするアボイドマップを作成していること.陥没の時間的な予測のために, 双曲線関数を利用した予測式を作成していることであり, 1990年3月の陥没の場合にはその発生位置をほぼ正確に予測することができた.