抄録
論理地質学の目指す論理体系の基本モデルとして「地層累重の法則」の論理構造を研究した.実空間の部分集合Aから地層名の集合Bへの全射fが存在するという仮定のもとに, B上の新旧関係を表す関係Kや累重関係を表す関係C, Lを厳密に定義した.aKb: aはbより古い, aCb: aはbのすぐ下側にある, aLb: aがbの下位にある.関係K, Lは次のような半順序としての性質をもつ.
K∩K-1=O (条件J1) はつねに成り立ち, KE=K∪Eは半順序である.もし, KE∪KE-1=I (条件J2) が成り立てば, KEは全順序となり, 地層の形成順序が定まる.一方, L∩L-1=O (条件J3) が成り立つとき, LE=L∪Eは半順序となり, さらに, LE∪LE-1=I (条件J4) も成り立てばLEは全順序となり層序が確定する.「地層累重の法則」はCからK (C⊂K) を推定する法則であり, 次のような法則として矛盾なく定式化できる:
L∪L-1=O⇒C⊂KおよびL∪L-1=O⇒L⊂K.
このような研究を進めることによって, 地質学の論理構造が明確になり, われわれの地質学に対する理解が深化するだけでなく, 多様な地質情報のコンピュータ処理法の開発に役立つことが期待される.