抄録
鉱物探査のためには, 各種の地球科学情報 (地球物理, 地球化学, リモートセンシング, 岩石データ等) について, その個々の性質と相互の関係を調べなければならない.これらのデータは1枚の地図上に統合され, そこから次の調査のための有望地が抽出される.このときの抽出結果は, 特定のデータに依存するのみならず, それらに適用される組合せ規則にも依存する.現在多用されている組合せ法としては, 多変量解析と確率論的手法 (ベイズ法とデンプスター・シャファー法) がある.探査地区 (S) は, 対象とする型の鉱床が存在する可能性があり, その型の鉱床 (D) に関係する地質的属性 (AとB) が知られている地域と定義する.Fig.1 (Table 1) に示されるような条件の探査地区について, 単位区画 (c) に鉱床が存在するか否か等の確率は, 式 (2.1) で与えられる.しかし, 我々が必要とするは式 (2.2) に書かれた各確率である.これを求めるには, 参照地区 (C: 探査地区と地質状況が似ていて, 対象となる型の鉱床がすべて発見されていると仮定できる地域) が必要である.場合1として, 参照地区がFig.2 (Table 2) に示す条件だとすると, 式 (2.3) に示すような確率が決まる.また, 場合2として, 参照地区がFig.3 (Table 3) に示す条件だと, 式 (2.5) に示す確率が決まる.場合1について, 式 (2.2) の確率を直接推定 [式 (2.2) の条件付確率は参照地区のそれに等しいと仮定] , 多変量回帰解析 [線形モデルと算術モデルを仮定] , および組合せのデンプスター規則から求め, Table 4に示す.この表の数字を比較すると, 上のモデルは参照地区で期待されるほどには役立っていないことが分かる.これは, DとA∩Bの関係がPc (D|A∩B) に利用されていないことによる.場合2についても式 (2.2) の確率を直接推定, 多変量回帰解析, 条件付独立の下でのベイズ規則, デンプスター・シャファー信頼関数から求め, Table 5に示す.これらの推定値は, 比較できる値がないので, 評価は不可能である.信頼関数を構築する方法を改善する必要はあるが, デンプスター・シャファー法が統合化問題を解き, 鉱床と属性との関係を明らかにする新しい方法となるだろう.