抄録
本研究の目的は, 遠隔探知された光学センサデータから自動的にリニアメントを抽出するエキスパートシステムを構築することである.
石油資源及び金属資源探査の概査段階において, 衛星画像を利用した地質構造の解析は有効な探鉱手段として多用されている.この解析においてリニアメントの抽出は広域的地質構造把握のための最も重要な手法とされている.ここではリニアメントを“断裂に基づく直線的な線状構造”と定義し, この他の線状構造はリニアオブジェクトと呼称する.写真地質判読専門家によるリニアメント抽出の過程は次の5段階に分けられる.第1段階: 対象地域の概要把握, 第2段階: 地形的特徴の把握, 第3段階: 直線的線状構造の抽出, 第4段階: リニアオブジェクトの除去, 第5段階: リニアメントの抽出.これらの各段階で専門知識を用いて推論を行っている.
本システムのソフトウェア構成及び処理フローをそれぞれFigs.1, 2に示す.ここで, リニアメント判定の基になる線状構造を画像から抽出する処理は, 以前開発した方向性線素抽出方式 (DSDA) を用いている.抽出された線状物に対して, 専門家の知識をルールとして組み込みリニアメントか否かの判定を行っている.専門家の知識を整理しルールとして組み込みが可能な部分を検討した (Table1参照) .
本研究の実験に用いた画像は, ランドサットTM白黒画像 (第4バンド) で対象地域は中国四川省である.原画像及び写真地質判読専門家によるリニアメント抽出図をそれぞれFigs.3, 4に示す.本システムによるリニアメント抽出結果をTable2に示す.写真地質判読専門家の抽出したリニアメントとの一致率は53%であり, かなり良い結果といえる.