情報地質
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生層序学的方法を形式表現するための数学的基礎
―古生物の生存期間と年代区分―
塩野 清治山口 久美子
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1997 年 8 巻 4 号 p. 227-237

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抄録

全順序集合 (A, ≦) の区間 [a, b] = {x|axb} やその前後関係:
[a, b] ≦ [a′, b′] ⇔aa′かつb≦b′
[a, b] ≪ [a′, b′] ⇔ba′または[a, b] =[a′, b′]
を基礎にして生層序学的諸概念を定式表現するための数学的枠組みを提案する.
一定期間Tに生存する古生物の個体の集合Σ0の分割をS0とする.σ∈S0を構成する個体の生存期間の和集合τ (σ) がすべてTの区間となるとき, S0の元を個体類とよび, τ (σ) を個体類σの生存期間とよぶ.このような枠組みを設定するといくつかの基礎概念が容易に数学表現できる.たとえば, 時刻tに生存する個体類の組み合わせはs (t) = {α|t∈τ (α) } で表現される.T上の関係~を
p~qs (p) =s (q)
で定義すると, ~に関する同値類は同じ組み合わせの個体類が同時に生存する時間帯を表す.また, 個体類は
ακβ⇔τ (α) ≦τ (β)
で定義される関係κによって順序づけることができる.
最後にS0のなかから3つの条件を満たす個体類を選択した場合を例にとって, 個体類の生存期間による年代区分に関係する諸性質を詳細に議論し, 上記の数学的枠組みが生層序学的方法の定式化に有効であることを示した.

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