情報地質
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テーブルの上に重ねたカードの公理系: 化石を含む地層の論理モデル
塩野 清治
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1997 年 8 巻 4 号 p. 257-267

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抄録

地質情報の有効なコンピュータ処理法を開発するには, 多様な地質学的データの解析法を体系づける基礎理論を確立する必要がある.本論文では地質学の基本的な法則である「初性的水平性の原理」, 「初性的側方連続性の原理」, 「地層累重の法則」および「化石による地層同定の法則」を組みあわせた生層序学の理論体系を構築するための予備的研究として, カードの集合B, 数字の集合Z, 記号の集合F, 集合間の関係およびいくつかの公理からなる数学モデルを提案する.B上の関係の性質として, 塩野・弘原海 (1992) で述べた地層累重の法則に関連する公理系と形式的に同じ3つの仮定A1, A2, A3に加えて, 「化石による地層同定の法則」を単純化した仮定A4を公理として導入する.
A1, A2, A3の仮定から塩野・弘原海 (1992) と同様の結果が導かれるので, 塩野・弘原海 (1992) の公理と同値であることを確認した.また, A4にもとついて, 同じ属性をもつカード群に関するいくつかの推論規則を導いた.それらは生層序学における基本的手続きを数学表現したものであると解釈できる.さらに, B上でA1~A4が成り立つとき, 同じ記号が書かれているカード群の集合上でもA1~A3に相当する性質が成り立つことという重要な性質がえられた.
本論文で対象とした数学モデルは比較的単純なものであるが, 化石を含む地層の基本的特徴をよく反映しており, 生層序学の数学的基礎を体系づけるための重要な手がかりを与える.

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