2025 年 36 巻 3 号 p. 65-70
本研究では,マルチビームソナーにより取得された海底点群データに対し,連続関数辞書を用いたスパースモデリングによるノイズ除去手法を提案した.点群の局所領域に対して特異値分解によりx−y 平面座標系を導出し,そこから生成した離散コサイン変換基底を用いて連続関数の係数行列を構築した.これを事前に学習した辞書と組み合わせ,直交マッチング追跡法によりスパース係数を推定し,z 値を再構成することでノイズを除去する.人工地形データおよび実測マルチビームデータを用いた検証により,検出精度と検出漏れのバランスを考慮した判別性能の指標であるF1 スコアにおいて,人工データではF1 スコアが0.95 程度,実測データではF1 スコアが0.7 程度となり,それぞれ良好なノイズ検出性能が得られた.実測データにおいてはノイズ点の見逃しがやや多い傾向が見られたが,教師データとして人工地形データを利用した場合でも利用できる点は実用性において大きな利点である.今後は,局所領域設定・閾値条件の改善や対象地形に類似した実測データに基づく適応的な辞書学習により,再構成精度の向上を図ることが課題である.