2004 年 110 巻 11 号 p. 715-730
飛騨外縁帯北東部の白馬岳地域にはペルム系白馬岳層が分布する. 白馬岳層は従来から言われていたようなメランジュやオリストストロームからなる付加体ではなく, 火山弧周辺の浅海で堆積した珪長質火砕岩類を主とする整然層である. 白馬岳層下部層形成時では珪長質火砕岩の堆積を主とするが, 下部層の上部形成時には玄武岩の水中噴火が生じ, バイモーダルな火山活動がみられる. 中部層形成時では, 火山活動が沈静化し頁岩や砂岩が堆積した. 上部層形成時では再びバイモーダルな火山活動が始まり, かつスランピング又は斜面崩壊によって石灰岩角礫や岩塊が珪長質凝灰角礫岩とともに堆積した.
白馬岳層は角閃岩岩塊を含む蛇紋岩に衝上断層で覆われ, 蛇紋岩の構造的下位に位置する. その後NW-SE方向とNE-SW方向の高角度断層の形成に伴って, 古生界岩塊を含む蛇紋岩メランジュが形成された.