地質学雑誌
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論説
島根県浜田市北部の中部中新統唐鐘累層畳ヶ浦砂岩部層に見られる特異な貝殻密集産状の古生物学・生痕学的解釈
小竹 信宏近藤 康生藤井 隆志芝崎 晴也
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2004 年 110 巻 12 号 p. 733-745

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抄録

島根県浜田市の中部中新統唐鐘累層畳ヶ浦砂岩部層下部で見られた皿状およびレンズ状の貝殻密集部の形成メカニズムと形成プロセスを, 生痕学的ならびに古生物学的観点から検討した. 明瞭なポットホール状の形態が識別できないことを別にすれば, これらの貝殻密集部の形態と内部構造の特徴は共産する生痕化石Piscichnus waitemata の充填物として見られる化石密集部のそれに酷似する. Piscichnus waitemata は一部エイ類の摂食活動によって形成された構造物と考えられており, 皿状およびレンズ状の貝殻密集部もエイ類の摂食活動による生物攪拌起源である可能性が極めて高い. 皿状およびレンズ状の貝殻密集部が母岩中に孤立して産出する理由として, (1) P. waitemata の充填物と母岩の質的および粒度の差異が極めて少ないこと, (2) 後から形成されたP. waitemata による破壊や上書き, そして内在型底生動物による生物攪拌作用などによって, P. waitemata の上部の形態情報が消去されてしまったこと, などが考えられる.

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© 2004 日本地質学会
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