地質学雑誌
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110 巻, 12 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
論説
  • 小竹 信宏, 近藤 康生, 藤井 隆志, 芝崎 晴也
    2004 年110 巻12 号 p. 733-745
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/18
    ジャーナル フリー
    島根県浜田市の中部中新統唐鐘累層畳ヶ浦砂岩部層下部で見られた皿状およびレンズ状の貝殻密集部の形成メカニズムと形成プロセスを, 生痕学的ならびに古生物学的観点から検討した. 明瞭なポットホール状の形態が識別できないことを別にすれば, これらの貝殻密集部の形態と内部構造の特徴は共産する生痕化石Piscichnus waitemata の充填物として見られる化石密集部のそれに酷似する. Piscichnus waitemata は一部エイ類の摂食活動によって形成された構造物と考えられており, 皿状およびレンズ状の貝殻密集部もエイ類の摂食活動による生物攪拌起源である可能性が極めて高い. 皿状およびレンズ状の貝殻密集部が母岩中に孤立して産出する理由として, (1) P. waitemata の充填物と母岩の質的および粒度の差異が極めて少ないこと, (2) 後から形成されたP. waitemata による破壊や上書き, そして内在型底生動物による生物攪拌作用などによって, P. waitemata の上部の形態情報が消去されてしまったこと, などが考えられる.
  • 市原 寛, 榊原 正幸, 大野 一郎
    2004 年110 巻12 号 p. 746-757
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/18
    ジャーナル フリー
    四国北西部に存在する南北系の地形構造の一つ, 松山平野 “堀江低地” について, 重力異常探査および既存のボーリング資料により検討を行った. ボーリング資料より, 低地下に東落ちの基盤深度の不連続帯およびこれに向かって急傾斜する堆積層の地層境界面の存在が明らかになった. また, 重力探査によると, 明瞭な負のブーゲー異常帯が低地とほぼ平行に存在することが明らかになり, その西端部の急変帯は上記の基盤深度の不連続帯によることが解明された. これらのデータより, 走向が北北西-南南東で, 東落ちの堀江断層が低地下に伏在すると推定される. 堀江断層は正断層成分を持ち, 堀江低地下に堆積盆を形成しており, 南方の中央構造線活断層系の分布域まで延長されると考えられる. 堀江断層は, 少なくとも更新世には活動していたと推定される.
  • 堀 利栄, ヘーミッシュ キャンベル
    2004 年110 巻12 号 p. 758-764
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/18
    ジャーナル フリー
    四国東部秩父累帯中の三畳系中部 (Lower Anisian) 層状チャートよりLingularia sp. (腕足類) の化石が産出した. 産出層準は、砥石型珪質粘土岩から頁岩とチャートの等厚互層への漸移部であり、堆積環境が還元状態から回復する過程の貧酸素状態を示す部分である. 本標本と類似するLingularia sp.は、ロシア極東シホテアリン山地の下部~中部三畳系 (Spathian-Lower Anisian) 層状チャート層の頁岩部やニュージーランド付加体中の層状チャートに伴う中期三畳紀の半遠洋性堆積岩からも見つかっている. この発見は、ペルム紀/三畳紀境界イベントに伴うOAE (海洋貧酸素事変) からの回復過程でいわゆる “Lingula ” (本研究でのLingularia も含む) が大繁栄したという見解を支持し、かつその影響が、古太平洋の深海域まで及んだ可能性を示唆している.
  • 松原 尚志, 小守 一男, 大石 雅之
    2004 年110 巻12 号 p. 765-770
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/18
    ジャーナル フリー
    Geloina が岩手県二戸郡一戸町の下部中新統最上部門ノ沢層舘砂岩部層から初めて発見された. これは新第三紀-第四紀を通してGeloina としては最北の産出記録となる. 分類学的検討の結果, この化石GeloinaG. cf. stachi Oyama と同定された. この産出により, 熱帯海中気候事件の時代 (ca. 16.5-15.0 Ma) のマングローブ湿地の分布は東北地方北部にまで達していたことが明らかとなった.
  • 橋本 善孝, 池原 (大森) 琴絵, 清水 以知子
    2004 年110 巻12 号 p. 771-778
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/18
    ジャーナル フリー
    走査型レーザー顕微鏡 (LSM) を用いた画像計測により堆積岩中のビトリナイト反射率を決定した. LSMでは単波長で平行性のよいレーザー光線を用いているため, 光源および単色フィルターの種類や絞り調整によらない客観的データを得ることができる. このような光学的な特徴に加えて, LSMでは反射光の輝度分布をデジタルイメージとして処理することができるという利点もある. 今回はLSMによって紀伊半島と九州の白亜系四万十帯から採取された試料を解析し, ビトリナイト反射率を精密に決定することに成功した. LSMのデータと従来の手法で調べた結果は同じトレンドを示すが, 前者は後者に比べて相対的にやや低い値を示した.
  • 狩野 謙一, 林 愛明, 福井 亜希子, 田中 秀人
    2004 年110 巻12 号 p. 779-790
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/18
    ジャーナル フリー
    糸魚川—静岡構造線活断層系の南部セグメント, 下円井断層において, 上盤側の石英閃緑岩起源のカタクレーサイトと下盤側の段丘砂礫層とが接する衝上断層面と厚さ7~8mの範囲の上盤側カタクレーサイト帯中に, 黒色脈状岩が散在しているのが認められた. その産状と組織から, この黒色脈状岩は粉砕作用によって細粒化した粒子を主体として構成されるシュードタキライトとみなすことができる. このシュードタキライトのうち, 断層面およびそこから上盤側30~40cmの範囲に派生する多数の注入脈と下盤側の砂礫層中に注入された小脈は断層面起源であり, その最新活動に伴って形成されている. この断層の最新活動は1550±70~2350±60y.B.P.で, その時の段丘砂礫層中での傾斜すべり変位量は1.0~1.2mと見積もられている. このことから, シュードタキライトの少なくとも一部は, 地表近傍での1.2m前後の地震断層変位で形成されたことになる.
口絵
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