抄録
本論では,これまでの東アジアのレス・湖沼堆積物の研究を概観し,約120編の文献を取り上げて紹介した.東アジアのレス・湖沼堆積物には,陸上域での第四紀古環境変動が記録されている.この研究史は新しく,現在までの約20年間で東アジアモンスーンの成立やその変動について多くの証拠が蓄積されてきた.その結果,レスの堆積開始時期は2.6 Maであり,それ以降ミランコビッチフォーシングによる氷期-間氷期サイクルに伴ってモンスーン変動が生じたこと,および,最終氷期以降のモンスーンには,D-Oサイクルと同調する短時間周期の変動が生じていたことが明らかにされた.さらに,レス古土壌の直下に堆積する紅粘土の研究から,モンスーンの成立時期が7~8 Maまで遡るかもしれないという新知見が明らかにされてきた.