地質学雑誌
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論説
下流域沖積河川系における河岸段丘の形成機構:水路実験による複雑応答説の検証
秋山 美奈子武藤 鉄司
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2006 年 112 巻 5 号 p. 315-330

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抄録
河川系複雑応答説は,河川系は1回の基準面低下に対してその下流域と上流域とが相互にフィードバックしあうように応答し,複数段の河岸段丘を生成すると述べている.この学説を小規模水路実験で検証した.水路下流部に堰を設け,平衡河川を実現させたあと堰を取り外すといった方法を用いたところ,下流域沖積河川系に関して次の知見を得た.(1)河川系が平衡状態におかれているときであっても,初期の段丘状地形(初期段丘)が生成しうる.(2)基準面低下はそれ以前に出現していた初期段丘の相対的高度を増幅させるように機能するだけである.(3)複数段の段丘を形成した複雑応答は河川系の自己組織的応答とみなせる.(4)本実験で観察された基準面低下後の自己組織的応答は河川系における河床物質の拡散過程として進行した.天然の小規模高勾配礫床河川系の下流域沖積区間でなら,この拡散的応答現象はきわめて短時間のうちに完了しうると予想される.
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© 2006 日本地質学会
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