抄録
対馬北部に分布する第三紀対州層群の半深海斜面相は,層準の異なる5つの砂岩体と,それらを内陸から取り囲む塊状泥岩層からなる.砂岩体では,小オーダー堆積サイクルの積み重ねからなる5つの大オーダー堆積サイクルが確認できた.それらを基にして,半深海斜面における海水準変動と堆積心の移動に支配された堆積史を解析し,以下の結果を得た.海水準上昇期から高位安定期を経て低下期まで,粗粒な堆積物は堆積場東部もしくは西部に供給された.続く低位安定期を経ての上昇期,高位安定期では,粗粒な堆積物は東部よりも西部に多く供給された.その後の低下期,低位安定期では,供給が全域に広がり,特に東部に多く供給されて海底地すべりを頻発させたが,一方,中央部への供給は少量であった.最後に,上昇期では,中央部に加えて西部でも供給が減少し,東部のみ多量の供給による海底地すべりが発生していた.