地質学雑誌
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論説
中部沖縄トラフ底で採取されたピストンコアに記録された約7300年前の堆積環境の急激な変化
川村 喜一郎池原 研藤岡 換太郎
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2007 年 113 巻 5 号 p. 184-192

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抄録

堆積システムの急激な変化が中部沖縄トラフの3 mと5 m長の2本のコアに記録されていた.構成される石英粒子の中央粒径は,7325年前の年代のK-Ah層で下位から上位に向けて急激に減少した.その中央粒径の減少は,約20 μmの粗粒粒子の除去による結果である.K-Ah層の年代で生じたこの変化は,1)海水準上昇で沖縄トラフと堆積物供給源である中国大陸とが離れたこと,2)トラフ内で8000~7000年前に黒潮の堆積物供給バリアが形成され,大陸からの堆積物のほとんどが強い海流により掃きとばされたことによって生じたと推測される.さらに,微細組織がその下位での水平配列から上位でのランダム配列へ変化する.その水平配列は,高堆積速度条件下で生じた無生物擾乱からの結果であると判断できる.このように,中部沖縄トラフでは,今日のような堆積システムが約7300年前に形成されて,現在までにそれが持続していると考えられる.

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© 2007 日本地質学会
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