地質学雑誌
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論説
紀伊半島東部秩父南帯の犬戻峡コンプレックス:放散虫化石年代と野又衝上断層
柏木 健司
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2007 年 113 巻 6 号 p. 233-248

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抄録

紀伊半島東部秩父南帯の犬戻峡コンプレックスは,珪質粘土岩,チャート,暗緑色珪質泥岩,および陸源砕屑岩から構成され,北傾斜の野又衝上断層を介して北側の野又帯と南側の桑木谷帯に区分される.陸源砕屑岩から産する放散虫化石年代は,野又帯でジュラ紀中世Bathonian中期~Callovian後期(ジュラ紀中世後期)を,桑木谷帯でジュラ紀中世Callovian後期~新世Oxfordian(ジュラ紀中世末~新世前期)を示す.
野又衝上断層は,破砕帯と断層岩の構造解析に基づくと,明瞭なスラスト変位を有する.北北東-南南西ないし北東-南西走向の高角断層は,犬戻峡コンプレックスの西南西-東北東走向の地質構造,および南側の白亜紀新世の付加複合体を切っている.さらに,犬戻峡コンプレックスの構造的下位の地層が,高角断層の1つの西山川-笠木川断層の東側に広く露出する.故に,高角断層は東側上昇の変位成分を示し,白亜紀末~古第三紀にかけて活動した.

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© 2007 日本地質学会
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