抄録
がん対策基本法が制定され,癌診療がさらに重要視されてきた.そのなかで癌診療における家族性腫瘍の位置付けおよび家族性腫瘍に関する遺伝的検査および遺伝カウンセリングが重要となる.公立大学法人福島県立医科大学外科では消化器,呼吸器,乳腺,内分泌等の固形癌を中心に診療しているが,家族性腫瘍もしばしば遭遇する.癌患者の場合,家族歴の聴取は極めて重要であり,この家族歴の聴取から,家族性腫瘍が想定されることがある.家系内に同一癌の複数存在や複数の癌の存在,さらに若年発症,多発,多重癌等の特徴から家族性腫瘍を想定する.また,遺伝カウンセリングも重要であり,当科の2006 年1 年間のカウンセリング件数は75 件であった.家族性腫瘍の治療には特徴があり,疾患によっては家族性腫瘍と認識,確定診断することで適切な治療方針の確立が可能となり,根治性が向上する.FAP やMEN では,すでに遺伝子検査によって治療方針を決定している.