地質学雑誌
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論説
近畿中央部,初瀬深成複合岩体の定置過程
西脇 仁奥平 敬元
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2007 年 113 巻 6 号 p. 249-265

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抄録

近畿中央部の初瀬深成複合岩体は,主に片麻状黒雲母花崗閃緑岩とそれと同時形成の苦鉄質岩類から構成されており,E-W方向とNW-SE方向の2つのシンフォームによって特徴づけられるベースン構造を形成している.花崗閃緑岩の片麻状構造は,主に黒雲母クロットの形態定向配列によって定義され,マグマ流~亜マグマ流によって形成されている.花崗閃緑岩中の角閃石の化学組成から,花崗閃緑岩マグマの定置深度は,およそ20 kmと見積もられる.花崗閃緑岩中には,高温の塑性変形組織が見出されている.マグマ流~亜マグマ流による変形と高温塑性変形の最大伸長方向が一致しており,これらの変形作用は花崗閃緑岩の定置に関連して,マグマの固結後に温度の低下とともに連続して生じたと推測される.E-W方向のシンフォーム構造は,領家変成帯中に広く認められるD3期鉛直褶曲構造と平行であることから,片麻状黒雲母花崗閃緑岩は,領家変成帯の鉛直褶曲時の広域応力場において定置したと考えられる.

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© 2007 日本地質学会
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