地質学雑誌
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論説
火山-深成複合岩体にみられる環状岩脈とシート状貫入岩:紀伊半島,尾鷲-熊野地域の熊野酸性火成岩類の地質
川上 裕星 博幸
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2007 年 113 巻 7 号 p. 296-309

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抄録

紀伊半島の尾鷲-熊野地域に分布する熊野酸性火成岩類(熊野酸性岩)について詳細な地質調査を実施し,花崗斑岩岩体の産状と定置様式を検討した.調査地の熊野酸性岩は流紋岩溶岩(神ノ木流紋岩),流紋岩質火砕岩類(火砕流起源と貫入起源),花崗斑岩(熊野花崗斑岩),細粒花崗岩(不動谷花崗岩)よりなる.調査地の熊野酸性岩の大部分を占める熊野花崗斑岩は,その一部がコールドロン構造の中で環状岩脈(幅2 km以内)とそこから派生するシート状貫入岩(厚さ最大1 km以上)として産することが新たに判明した.シート状貫入岩の天井を調査地北西部の複数の地点で確認した.熊野花崗斑岩は従来言われてきたような溶岩湖が冷却固結した岩体ではなく,巨大な貫入岩体である可能性が高い.環状岩脈とそこから派生したシート状貫入岩という組み合わせは,火山-深成複合岩体の深部における特徴的な構造である可能性がある.

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© 2007 日本地質学会
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