抄録
四国西部の秩父累帯については,黒瀬川帯が認められないため,地体構造区分や構造層序に関して以前から種々の議論があった.秩父累帯北部に位置する大洲市南西部地域の構造層序と構成ユニットの帰属を検討し,新たな知見を得た.調査地域は,御荷鉾緑色岩類,古藪ユニットI・II,大洲ユニットI・IIに区分される.古藪ユニットIはチャートや緑色岩,石灰岩などから,古藪ユニットIIはチャートや砂岩,泥岩などから構成される.大洲ユニットは全体的に変成を受けており,泥質岩や砂質岩からおもに構成される.古藪ユニットは,ほぼ水平な断層を介して大洲ユニットに重なると推定される.岩相的特徴,緑色岩や砂岩の岩石学的・地球化学的特徴,泥質岩の変成白雲母K-Ar年代などを考慮すると,古藪ユニットIは南部秩父帯の三宝山ユニットに,古藪ユニットIIは同帯の斗賀野ユニットに対比され,大洲ユニットは白亜紀四万十帯の深部相に相当すると考えられる.