抄録
龍野-相生地域の舞鶴テレーンは,夜久野岩類のほかに,模式地の舞鶴層群中部層・上部層と夜久野層群わるいし層にそれぞれ対比される上部ペルム系龍野層と中部三畳系平木層から構成される.従来知られている平木層と新たに確認された平木層は泥岩・砂岩を主体とし,3層準に径20 m以下の石灰岩を介在する.Meandrospira dinarica Kochansky-Devidé and Pantic, Meandrospira pusilla(Ho)など年代決定に有効な有孔虫化石が検出されたことから石灰岩の年代はアニシアン前期(Aegean)といえる.石灰岩は成層し,砕屑性石英粒を多く含み,大半が海百合・二枚貝などの生砕物を含む陸棚浅海相のウーイド石灰岩からなる.平木層の石灰岩の産状や岩相は,黒瀬川テレーンに分布する貝沢層や田浦層のものに酷似する.一方,7属8種から構成される平木層の有孔虫フォーナは,貝沢層や田浦層のフォーナに比べ種の多様性が低く,両層やテーチス海域のアニシアン後期(Pelsonian・Illyrian)のフォーナに特徴的なPilammina densa PanticやInvolutinid科の属種を欠くなど群集組成も異なる.