2008 年 114 巻 3 号 p. 109-126
地すべり移動体を貫いて採取した不攪乱コア試料を用いて,新鮮岩石から風化岩石までの密度・間隙率,鉱物・化学,岩石組織の鉛直変化を解析し,それらにより,泥質片岩の風化プロセスとメカニズムを明らかにし,風化と地すべりとの関係を議論した.
風化帯内部には,下方浸透する酸化的な水と岩石との反応によって酸化フロントが形成され,酸化フロントでは緑泥石がAl-バーミキュライトに変化し,ゲーサイトが生成され,黄鉄鉱と石墨は酸化消失する.黄鉄鉱の酸化は酸化フロント直下においてもFe3+イオンによって起こる.黄鉄鉱の酸化により生じる硫酸は,下方へ浸透して岩石と反応し,おそらく上載荷重の解放によって形成された亀裂とともに岩盤強度を急低下させる.強度低下した岩盤では,剪断が容易になり,それが地すべり破砕帯の形成を助長する.一方,この破砕帯は低透水性であり,酸化的地表水の下方浸透を妨げ,以深への風化の進行を妨げる.