抄録
領家帯土岐花崗岩中の石英粒子に含まれるヒールドマイクロクラック(HC)とシールドマイクロクラック(SC)およびオープンマイクロクラック(OC)の三次元方位分布ならびに流体包有物の検討から,古応力方位とその変遷を議論した.HCの三次元方位はN-S~NNW-SSEのσHmax方位を示すのに対し,SCおよびOCはE-WのσHmax方位が卓越する.HCを構成する流体包有物のマイクロサーモメトリーから300~400℃の形成条件が推定され,HCがK-Ar黒雲母年代の60 Maごろには生成していた.したがって,西南日本の15 Maごろの回転を元に戻すと,HC形成時のσHmax方位はおよそNW-SEとなる.それに続いて,σHmaxが変化し,炭酸塩鉱物などで充填されたSCや,さらに地殻浅部でOCが形成された.土岐花崗岩を不整合に覆う瑞浪層群の年代を考慮すると,OCの形成は前期中新世(約20 Ma)頃から開始された.