地質学雑誌
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論説
中新統田辺層群にみられる泥ダイアピル類の貫入構造
宮田 雄一郎三宅 邦彦田中 和広
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2009 年 115 巻 9 号 p. 470-482

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抄録

田辺層群白浜累層には下位から円筒,ドーム,シル,岩脈という異なる形態の貫入岩体が見られる.市江地域の円筒状岩体は,直径数10 mで母岩をほぼ垂直に貫く.直径約150 mでドーム状の市江崎岩体は,母岩の成層構造をほとんど乱すことなく母岩のブロックや粒子を多量に取り込んでいる.岩体を中心に,放射状の泥脈・砂脈が母岩を貫く.見草岩体は長径200 mあまりのラコリス状で,その上位はシル・岩脈に富む.実験によると,粘性の低い流体が成層不良の地層中に貫入する場合は,集中した流体の鉛直上昇が円筒状通路を,粘性が高い場合はマッドチャンバーを形成した.上載圧が低く不透水層を挟む地層には段階的に貫入して,シル・ラコリス・泥脈群をつくった.田辺層群のダイアピルは白浜累層堆積時に貫入し,一部は海底面上に噴出した.初生的な流体は下位の朝来累層中に封じ込めらた泥水で,貫入過程で粗粒物質を取り込みながら岩相を変化させた.

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© 2009 日本地質学会
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