抄録
本論では,房総半島の中部に分布する安房層群清澄層の地質時代を決定するために,清澄層から産出する石灰質ナンノ化石を検討した.併せて,西部赤道太平洋の深海底コアであるHole 806Bの下部鮮新統のReticulofenestra属の大きさの変化を検討し,その大きさが変化するバイオイベントを明らかにして,標識種に乏しい清澄層の年代決定に役立てた.本研究の結果,清澄層からは多くの石灰質ナンノ化石の産出が確認できたが,確認された化石基準面は石灰質ナンノ化石帯CN10帯とCN11帯の境界(Amaurolithus spp.の産出上限)のみであった.また,清澄層に見られるReticulofenestra属の大きさの変化によるイベントは,西部赤道太平洋の下部鮮新統に見られるそれと同様であり,それに基づく年代推定は古地磁気層序の結果と調和的である.このことはReticulofenestra属の大きさの変化に基づく化石イベントが年代決定に適用可能であることを示している.