地質学雑誌
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論説
紀伊半島中央部,中奥火砕岩岩脈の産状と形成過程-奈良県川上村中奥ヒボラ谷の例-
北嶋 亜以子和田 穣隆
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2010 年 116 巻 9 号 p. 510-521

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抄録
紀伊半島中央部に位置する中奥火砕岩岩脈群は,中期中新世の爆発的火山活動による大台カルデラ形成に関わる弧状岩脈であると考えられている.このうち中奥ヒボラ谷における火砕岩岩脈の岩相を再検討した結果,岩脈外縁部から中心部にかけて,溶結した流紋岩質火山礫凝灰岩,溶結した流紋岩質結晶質凝灰岩,溶結した流紋岩質ガラス質凝灰岩の3つの岩相からなることがわかった.岩脈中心部のガラス質凝灰岩相においては,火道閉塞時の状態を示す火道壁に平行なユータキシティック構造,層流状態であった可能性を示すフォリエーション,さらに粘性流動が起こったことを示す縦横比が1: 50にもなる溶結した軽石を観察できる.これらの産状から,ヒボラ谷で見られる火砕岩岩脈の岩相は噴火最盛期から噴火終息期までの噴火活動を記録しており,さらに中奥火砕岩岩脈群の岩脈ごとの岩相の多様性が大台カルデラの爆発的噴火活動様式を示している可能性がある.
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© 2010 日本地質学会
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