地質学雑誌
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116 巻, 9 号
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特集 陥没カルデラ(II):噴火プロセス・テクトニクスと長期予測
総説
  • 鍵山 恒臣
    2010 年116 巻9 号 p. 463-472
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/22
    ジャーナル フリー
    本論文は,カルデラ生成噴火の準備過程がどのように進行しているかを研究するために下記の仮説を提案する.火山活動には2つの端的な例に代表される多様性がある.この多様性は,マグマが地表に噴出しやすいか,地下に滞留しやすいかによって規定されており,噴出が容易な場合には噴火卓越型火山活動,滞留が容易な場合には地熱活動卓越型火山活動となる.マグマが地下に容易に滞留できる条件下では,間欠的に深部から供給されるマグマは,地表に達することなく地下に滞留するイベントを繰り返す.地下に滞留したマグマでは,分化や地殻の同化が進行する.このようなイベントを繰り返す中で,深部から供給されてきたマグマが地下に滞留していたマグマにぶつかり,過熱・発泡が進行して大規模な噴火が発生する.我々は,ここに示した作業仮説を様々な視点から検証していく必要がある.
  • 高田 亮
    2010 年116 巻9 号 p. 473-483
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/22
    ジャーナル フリー
    インドネシアで起こった有史の大規模噴火の,噴火直前の現象,噴火経緯を総括した.大規模噴火直前には,少なくとも2~3ヶ月前から,小規模噴火が発生していた.この期間には,噴火孔,噴気孔や熱水爆発孔の数や活動する範囲が,カルデラ形成の破局的噴火に向けて拡大し,2 kmから数kmの規模に達する特徴が見られた.大規模噴火に至る中長期の準備過程として,約10万年間,高噴出率の維持により大きな山体を形成したこと,噴火の1万年から数千年前には,噴出率が激減し,噴火様式が爆発的になり,火口が形成される範囲が縮小したり,中心から移動したことなどの特徴を見出すことができる.さらに,インドネシアのカルデラ火山体の規模とカルデラ規模の関係をまとめた.大きい山体には,大きいカルデラが形成される傾向がある.最後に,マグマが蓄積する原因やカルデラの多様性を制御する要因を検討する.
  • 鈴木 桂子
    2010 年116 巻9 号 p. 484-495
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/22
    ジャーナル フリー
    大規模火砕流は様々な岩相の火砕流堆積物を形成し,ラグブレッチャーはバイエス型より漏斗型に多い.クレーターレイクカルデラでは,ラグブレッチャーのコンポーネント分析により大規模火砕流がリング割れ目系に沿った複数火口から噴出したと解釈される.ワイングラス溶結凝灰岩中に認められる絞り出しとウーズはカルデラ壁形成時に生じた構造であり,冷却速度計算によりカルデラ崩壊がワイングラス火砕流堆積から9日~11ヵ月以内に発生したと推定される.漏斗型カルデラでは,降下火砕物噴火で始まり,小規模火砕流または火砕サージの発生の後に大規模火砕流噴火に至るが,カルデラ陥没のタイミングで火砕流が噴出しているので,それぞれの体積の大小はカルデラ形成には関係ない.大規模火砕流の場合,フローユニットの数が少ないほど,噴出率が大きくなり,噴出率が大きいほど,マグマ溜まりの減圧速度が大きくなるので,カルデラ陥没が進行し易い.
論説
  • 高島 紫野, 和田 穣隆, 新正 裕尚
    2010 年116 巻9 号 p. 496-509
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/22
    ジャーナル フリー
    紀伊半島中央部,三重県蓮峡の宮ノ谷複合岩脈についてマグマ混合および岩脈形成過程を検討した.岩脈は縁部を玄武岩質安山岩,中央部を流紋岩で構成され,両者の間に安山岩が挟在する.産状・岩石組織・全岩化学組成から,苦鉄質マグマは珪長質マグマ溜りへの注入後,より浅所へ貫入し苦鉄質岩脈を形成したと考えられる.一方,苦鉄質マグマは珪長質マグマとマグマ溜り上部から火道内で混合し中間質マグマの形成後,苦鉄質岩脈中へ貫入し複合岩脈を形成したと推定される.大台カルデラ周辺の複合岩脈群は火砕岩岩脈と並走し,両者の形成年代は一致する.火砕岩岩脈には苦鉄質・中間質の本質物質も含まれる.以上のことから複合岩脈と大台カルデラの形成に成因的関係が推定される.宮ノ谷岩脈の珪長質中心部と安山岩には浅所貫入した冷却途中の深成岩体に由来する花崗岩包有物が含まれ,複合岩脈とカルデラ形成の関係を理解する手がかりを与える可能性がある.
  • 北嶋 亜以子, 和田 穣隆
    2010 年116 巻9 号 p. 510-521
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/22
    ジャーナル フリー
    紀伊半島中央部に位置する中奥火砕岩岩脈群は,中期中新世の爆発的火山活動による大台カルデラ形成に関わる弧状岩脈であると考えられている.このうち中奥ヒボラ谷における火砕岩岩脈の岩相を再検討した結果,岩脈外縁部から中心部にかけて,溶結した流紋岩質火山礫凝灰岩,溶結した流紋岩質結晶質凝灰岩,溶結した流紋岩質ガラス質凝灰岩の3つの岩相からなることがわかった.岩脈中心部のガラス質凝灰岩相においては,火道閉塞時の状態を示す火道壁に平行なユータキシティック構造,層流状態であった可能性を示すフォリエーション,さらに粘性流動が起こったことを示す縦横比が1: 50にもなる溶結した軽石を観察できる.これらの産状から,ヒボラ谷で見られる火砕岩岩脈の岩相は噴火最盛期から噴火終息期までの噴火活動を記録しており,さらに中奥火砕岩岩脈群の岩脈ごとの岩相の多様性が大台カルデラの爆発的噴火活動様式を示している可能性がある.
口絵
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