抄録
一方向に卓越する風系と乏しい給砂量の環境条件で形成される三日月型砂丘のバルハンは,砂漠地帯だけでなく,深海底や雪原,あるいは火星表面でも観測される普遍的な砂丘形態である.個々のバルハンは集団内で衝突や砂の授受を行うことで相互に影響を及ぼし合っている.この点に注目して筆者らが行った水槽実験と数値実験によって,バルハン間の相互作用とそのダイナミクスは説明できる.バルハンの衝突過程には合体・貫通・分裂の3パターンがあり,これらのいずれのパターンで衝突するかは砂丘の同軸からの偏位とサイズ比に依存している.これらの知見は2体のバルハンの相互作用だけでなくバルハン集団や横列砂丘からバルハンの生成過程など様々な砂丘のダイナミクスの理解につながる.このような実験と数理模型の緊密な結びつきが砂丘研究を定性的研究から定量的研究へと発展させていく鍵になると期待される.