地質学雑誌
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117 巻, 3 号
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特集 モデル実験で探る地形地層形成過程のダイナミクス
  • 山口 直文, 増田 富士雄
    2011 年 117 巻 3 号 p. 107-115
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/07
    ジャーナル フリー
    個々の粒子の3次元粒子配列を調べることを目的として,米粒子を用いたマイクロデルタ堆積実験を行った.ほぼ等粒な楕円体である米粒子を用いたことで,見かけの長軸の長さから,個々の粒子のオリエンテーションも読み取ることができた.形成されたマイクロデルタ堆積物中には次の二種類の配列を示す粒子が顕著にみられた.(1)流向に平行なオリエンテーションでフォーセット面の傾斜に近いインブリケーションを示す粒子.(2)ランダムなオリエンテーションでほぼ水平のインブリケーションを示す粒子.(1)の配列は,流速の小さい実験で顕著であった.この場合,フォーセット面の最上部に落下した後,なだれによって再配列した粒子が多い.また(2)の配列は,流速の大きい実験で顕著であった.この場合は,フォーセット面に落下した後,なだれによる再配列がされないまま堆積する粒子が多い.この結果は,斜面が前進して形成される堆積物において,3次元粒子配列の特徴が,堆積過程の違いを反映していることを示唆している.
  • 三谷 典子, マトゥティス ハンス―ゲオルグ, 門野 敏彦
    2011 年 117 巻 3 号 p. 116-121
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/07
    ジャーナル フリー
    火砕流堆積物の主な特徴は,鉛直方向に密度やサイズによる様々な分離が見られることである.これらの特徴を生じるメカニズムを理解するために,我々は表面が粗い斜面上を流れ,密度やサイズの異なる異物を含む粉粒体を数値的に調べた.数値計算結果は,異物粒子は密度に応じてマトリックス粒子中を上昇あるいは下降することを示した.これらの密度およびサイズによる分離は,異物粒子が流動化した粉粒体から受ける浮力および粘性抵抗に支配されていることを示している.さらに計算結果は,流れの中心部では異物粒子に働く粉粒体の抵抗は液体の粘性抵抗の法則に従うことを示唆している.
  • 成瀬 元
    2011 年 117 巻 3 号 p. 122-132
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/07
    ジャーナル フリー
    混濁流がオートサスペンションに達すると,外部条件(斜面傾斜など)が変化しない限り流れは減衰せず,無限に持続する.この現象は,混濁流が底面での堆積・侵食作用で密度を変化させることから生じている.混濁流が底面を侵食すると,巻き上げた堆積物により流れの密度は増加する.増加した密度によって流れは加速し,さらに混濁流は堆積物を侵食するようになる.このサイクルによってオートサスペンションが実現する.理論上,自然界の海底谷を流れる侵食的な混濁流の多くはオートサスペンション状態であると推定されているが,実際の観測や水槽実験ではまだ十分に確認されていない.オートサスペンションは混濁流の起源や海底扇状地の発達過程を考える上で鍵となる現象である.今後,理論を実験と観測で検証し,泥の固着性などより自然状態を考慮したモデルでオートサスペンションの成立条件を検討する必要があるだろう.
  • 宮田 雄一郎, 田中 凡子
    2011 年 117 巻 3 号 p. 133-140
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/07
    ジャーナル フリー
    開水路流れで生成するアンチデューンの形態が流砂濃度によって変わることを実験で示した.フルード数1.4のもとで,流砂濃度の高い順に,平滑床,安定して上流移動するアンチデューン,砕波を伴うアンチデューン,移動しないアンチデューン,下流移動するアンチデューン,高領域リップルといった異なる形態が存在する.流砂濃度が低いほど砕波・跳水がより頻繁に発生する.砕波が起こるとトラフが充填されて下に凸のレンズ状ラミナセットを生じる.一方,流砂濃度が高いほどアンチデューンは大きな一定の波長で安定し,トラフ通過を反映する侵食面が準平行な多重逆級化層をつくる.底面付近では流れの鉛直速度勾配が大きく,粒子の速度勾配が小さい.粒子-流体間での運動エネルギーの交換が流れの速度勾配を低下させるため,流砂濃度が高いほど,濃度勾配は小さく,速度勾配は低下する.すなわち,流砂は流れを安定化させる働きをもつ.
  • 関口 智寛
    2011 年 117 巻 3 号 p. 141-147
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/07
    ジャーナル フリー
    ウェーブリップルは,与えられた振動流条件と堆積物特性の下で,安定的に持続する特定の形状,サイズ,波峰線オリエンテーションを有する.振動流条件が変わるとウェーブリップルはその条件下での定常状態の獲得をめざして遷移する.新たな振動流方向が初期リップルの波峰線と直交する場合,遷移過程は(1)初期リップルと定常リップルの波長の大小関係,(2)振動流の非対称性,(3)堆積物粒径に依存する.とくに,初期リップルの波長が定常リップルのそれよりも大きいと,初期リップルの形状の一部をとどめる遷移リップルが一時的に現れる.地層に見られる遷移リップルは,地層形成時の振動流条件を推測する重要な手がかりとなりうる.
  • 谷口 圭輔, 遠藤 徳孝, 関口 秀雄
    2011 年 117 巻 3 号 p. 148-154
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/07
    ジャーナル フリー
    移動砕屑物量が少ない場で発達する孤立砂丘地形と流れ環境との関係を調べる水中モデル実験をおこなった.初期の孤立地形に作用させる流れを交互二方向流としたところ,峰線の挙動にふたつの類型があることが分かった.既存の峰線とは異なる位置に新たな峰線が形成される独立型と,既存の峰線に沿って逆方向のスリップフェイスが形成され,峰線の移動方向が逆転する反転型である.両者は二方向流の方位差θに対応し,θ=45°の場合は独立型のみが,θ=180°の場合は反転型のみが生じた.θ=90°とθ=135°の場合,独立型と反転型とが地形上の異なる部位で同時に進行した.これらの峰線の挙動が長い時間に渡って繰り返されると,その累積的な影響の結果として,3種類の地形が発達した.これらの地形は,それぞれ天然のドーム砂丘,縦列(セイフ)砂丘,リバーシング砂丘と共通する形態を持っていた.この成果は,天然の各種孤立砂丘の形成要因解明に寄与するものである.
  • 勝木 厚成, 西森 拓, 遠藤 徳孝, 谷口 圭輔
    2011 年 117 巻 3 号 p. 155-162
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/07
    ジャーナル フリー
    一方向に卓越する風系と乏しい給砂量の環境条件で形成される三日月型砂丘のバルハンは,砂漠地帯だけでなく,深海底や雪原,あるいは火星表面でも観測される普遍的な砂丘形態である.個々のバルハンは集団内で衝突や砂の授受を行うことで相互に影響を及ぼし合っている.この点に注目して筆者らが行った水槽実験と数値実験によって,バルハン間の相互作用とそのダイナミクスは説明できる.バルハンの衝突過程には合体・貫通・分裂の3パターンがあり,これらのいずれのパターンで衝突するかは砂丘の同軸からの偏位とサイズ比に依存している.これらの知見は2体のバルハンの相互作用だけでなくバルハン集団や横列砂丘からバルハンの生成過程など様々な砂丘のダイナミクスの理解につながる.このような実験と数理模型の緊密な結びつきが砂丘研究を定性的研究から定量的研究へと発展させていく鍵になると期待される.
  • 大内 俊二
    2011 年 117 巻 3 号 p. 163-171
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/07
    ジャーナル フリー
    細砂とカオリナイトの混合物からなる低い正四角柱状の砂山に人工降雨を降らせて微小な侵食地形を発達させた.侵食は,初期に頻発した外縁急崖の崩壊を除けば,谷の下刻と谷系の発達で始まり,中間斜面,尾根部へと進んだ.これに伴って,平均高度は時間経過とともに指数関数的に低下した.同じ初期条件の下で侵食が進んでから隆起を起こした場合,谷部で遷急点の遡上を伴う侵食が復活し,起伏と侵食量が増加した.起伏は隆起継続中に一定となる傾向を見せ,起伏が一定の隆起速度に応じた大きさで安定しうることを示唆した.侵食の再活発化は扇状地への供給砂量を増加させ,隆起とともに砂山周りの扇状地面すなわち局地的な侵食基準面も上昇した.砂山の平均高度が上昇を続けても,起伏が一定の値で安定する傾向を見せたのはこのためである.このようなアナログモデル実験は,現実の地形では観察不可能な地形発達過程の全体像を把握するのに役立つと考えられる.
  • 武藤 鉄司
    2011 年 117 巻 3 号 p. 172-182
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/07
    ジャーナル フリー
    堆積物の輸送が行われているにも関わらず堆積も侵食も実質的に起こらない河川を平衡河川という.平衡河川は河川系における埋積レジムと削剥レジムの境界条件の具現に他ならず,その理解は成因論的層序学の基軸をなす.従来の平衡河川観は下流域沖積系における平衡河川の実現を静止海水準に対する河川系の平衡応答の結果と捉えるが,筆者らによる一連のモデル実験と理論的検討はそれとは異なる理解をもたらした.新しい平衡河川観は次のように要約される.固定境界を持たない下流域沖積系では,(1)平衡河川は海水準が下降するときのみ実現可能であり,(2)平衡河川の実現を許す海水準下降パターンは沖積勾配αと海底基盤勾配φに依存し,(3)平衡河川にはα<φのもと非平衡応答で実現するアロジェニックなものとα=φのもと平衡応答で実現するオートジェニックなものとがある.新しい平衡河川観を織り込んだ成因論的層序学の今後の展開が待たれる.
  • 西本 明弘, 水口 毅, 狐崎 創
    2011 年 117 巻 3 号 p. 183-191
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/07
    ジャーナル フリー
    デンプン-水混合物の乾燥過程における3次元柱状構造亀裂について数値的に調べた.混合物を応力場と含水量場をもつ弾性多孔性物質と仮定し,二つの場の時間発展をそれぞれバネネットワークモデルと水ポテンシャルを用いた現象論的なモデルで記述した.数値計算の結果,表面から内部に向かって進行する乾燥フロントをもつ含水量分布,およびそのフロントと共に成長する亀裂の角柱構造を再現した.柱の太さの粒直径依存性,深さと共に角柱構造が拡大する過程を調べた.また,破壊点が多角形の辺に沿って伝播する非一様な破壊過程を見つけた.亀裂が含水量場に与える影響および柱状節理との対比について議論した.
口絵
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