地質学雑誌
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論説
宮城県沖大地震の前兆を捉えるための深層地下水変動研究:
2008年2月~2009年12月の観測結果
鹿島 雄介南須原 美恵中村 隆志山内 常生大槻 憲四郎
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2011 年 117 巻 8 号 p. 451-467

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抄録

宮城県沖大地震に関連した前兆を検出するため,深層地下水変動観測システムを構築した.本論文で取り扱った2008年と2009年の観測では,2008年5月8日の茨城県沖地震(MJ7.0; MJは気象庁マグニチュード),同年6月14日の岩手・宮城内陸地震(MJ7.2), 7月19日の福島県沖地震(MJ6.9),および7月24日の岩手県北部沿岸地震(MJ6.8)に関連した水位・水温変動が捉えられた.潮汐に対する観測システムの応答を調べ,3本の孔井の中の2本について,水位換算体積歪を2.27×10-9/mm,および0.5×10-9/mmと見積もった.水位換算体積歪と理論的な静的体積歪変化から求められた地下水変動の期待値と観測値がよく一致し,地下水変動の要因が静的歪変化であると示唆された.我々の観測システムが地震直後の地下水変動を検知できる下限は,MJ=2.4logr+1.0 (rは震源距離震で,単位はkm)で近似できる.このような式は静的歪変化の距離減衰だけでなく,地震動の距離減衰からも導かれる.

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© 2011 日本地質学会
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